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2-116.
甘い穂高さんには裏がある。
そんなの何度思ったか分かんないし、何度思い知ったか分からない。
それでも何故か俺は甘やかされている時はそのことを忘れがちで、大体叫ぶことになる。
それは今日も例外ではない。
「やだやだやだやだやだあっ!」
「ホテルで夢精してもいいのか?」
「それもやだぁぁあ」
「うるさい。夜なんだからあんま叫ぶな」
「叫ぶよ!叫ぶに決まってんじゃん!」
ギャンギャンと叫ぶ俺はなんの服も着ていない。
それは全然いい。
が、また俺にひとりでさせようとしてるのはやだ!
えっちはしたいけどひとりで楽しみたいわけじゃない(なんなら俺は何も楽しくない)。
「やだぁあ」
「誠のためだ」
「本音は?」
「半分本音」
「残りの半分は?」
「お前の泣きそうな顔が見たい」
「ほらあっ」
知ってたよ!
分かってたよ!
「満足できなくて、物欲しそうな顔して俺見てんの。すっげえぞくぞくすんの、分かんない?」
「………分かんなぃ」
「誠は、見られてんの嫌?」
「………恥ず、かしぃ、じゃん」
お風呂で裸を見られる、とかそんなレベルをゆうに超えてる。ひとりえっちってなんでひとりえっちっていうか知ってる?ひとりでするからだよ。
誰かが見てたらそれはもう1.5人えっちじゃん。
そもそもひとりで、こっそり楽しみたいっていうひとりえっちのそもそもを壊してんじゃん。それ見られて嬉しいとかだいぶやばい人だと思うよ。
「気持ちぃの嫌い?」
「………穂高さんがしてくれる方が、気持ちいいもん」
そう答えたら返事が返ってこなくて、ちらりと穂高さんを見る。そこにはさっきよりも悪い笑みを深くした穂高さんがいて、俺は見なかったことに俯いた。俺の首と同じようにくたりとした可哀想な俺のおちんちんに同情してあげたい。
「一回でいいんだよ」
「ふえ?」
「とりあえずお前がひとりで出せるようになれればそれでいい。今日何度もやれなんて言わねえよ」
「………ぜったい?」
「絶対」
一回でも嫌なんけどな……。
だけど俺のおちんちんは何故かオナニーの仕方をすっかり忘れたみたいで、俺がひとりで触ったからってうんともすんとも言わない。
「あんまし、見ないで欲しい」
「無理だろ」
「………」
しょんぼりと項垂れる俺にもういいかと言わんばかりにのしかかってくる穂高さん。
あんまし意地悪しないでとキスの前に呟くと、その言葉は聞かないと言わんばかりに深いキスをされた。
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