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2-117.
目が覚めた時には朝というには日が高い。
そんなことはよくあることだし、休みの日の俺の体が歯形に鬱血痕だらけなのもよくあること。
体が少しだるいのも良くあること。
そんな体を隅から隅まで見渡してみる。うん、大丈夫そう。
「なにしてんの?」
「うわっ、いつからいたの?」
「お前が鏡の前に立った辺り」
寝てるかもと思って声をかけずに扉を開けたんだろう。
そしたら俺は起きてたけど、裸のまま鏡で自分を見てるなんて変なことをしてる俺がいた訳だ。
「穂高さんがあんまり見てきたから、穴でもあいてないかと思って」
「あいてねえよ」
だって、穴あくかと思ったもん。
自分じゃどれほど穂高さんに教えられて触ったとしてもやっぱり違うくて、穂高さんに呼ばれて穂高さんを見るとその目の中に仄暗い欲望がちらちら見えるんだもん、なんかよく分かんなくなった。
あんな目で見て欲しくないような、見て欲しいような。
うん?見て欲しいような!?
いや、ナイナイ!気のせい!
「どうした?」
「ぎゃ!な、なんでもないっ」
考えていた相手が急に目の前いっぱいに広がって変な声が出た。
やばい、俺今おかしくなってた!と頭を振っておかしな考えを振るい出す。
「どうした?」
「なんでも、なぃ」
だめだ、俺どうした!
だって仕方ないじゃん、そんな俺見て楽しんでるのも、いつもと違う興奮をしてるのもなんとなく、穂高さんの目から分かって。
そう思うとなんか、ぐずぐずにされた。
頭ん中溶けてった。
そんな穂高さんを思い出すと下半身に生理現象じゃない熱が集まりそうになってきて、俺はやっぱり頭を振るった。
このまま寝室にいると良くない気がする!と、置かれている部屋着を着る。
「ぅ、」
「?」
「乳首、噛むのやめて欲しぃ」
「無理だって分かって言ってんだろ。嫌」
「………服、擦れてやだ」
「ハハッ、絆創膏いる?」
「いらないっ!ばかばかっ!」
「すぐ気にならなくなるって、たぶん」
たぶんって、たぶんって、適当だなぁ。
他人事だと思って。
服が擦れるのがわかる乳首ってどうなんだろう、なんかおかしくない?
ここってこんなに敏感だった?布なんか擦れても気にしたことなんて無かったのに、ここ最近は気になって仕方がない。
ううっと唸りながら服を着て、穂高さんに引っ張られて立ち上がる。
「どこも痛くない?」
「乳首が痛い」
「それは別にいい」
「よくないぃ」
ぐずる俺を半ば抱えて、リビングのソファに降ろされる。
そして、穂高さんはキッチンに向かう。そのまま時計を見ると20分ほどで正午なんて時間で、俺は思っていたよりも寝ていたらしい。
「はぁあ、出張やだなぁ。こうして穂高さんを見れないのが最低でも3週間もあるの?やだ、無理、飢え死にする」
「飯は食えよ」
「ご飯じゃなくて穂高さん不足で死んじゃう」
「電話くらいはできるだろ」
「………声、聞いたら会いたくなるじゃん」
「ほんと可愛いこと言うのな」
くすっと、静かに、それでいて楽しそうの笑う穂高さんはそんなに寂しくないのかな。
「俺はいつもと変わらないんだぞ」
「うん?」
「いつもと同じ生活をしてるのに、お前が1ヶ月も帰ってこねえの」
その声にはいつもと違う、しんみりした感じが混ざっている。
そういえば、穂高さんがこの家を1週間くらい明けた時、俺家に帰ってきてもすっごい寂しかったな。穂高さんがいて、初めて帰ってきたぁって感じるんだなって思い知ったことがあったっけ……。
穂高さんも、俺みたいに駄々を捏ねないだけで同じなのかな。
「………でも、やっぱりいぎだぐない゛」
「ぶっ、結局泣くのかよ」
穂高さんも寂しんだろうなと思えても、だから俺も頑張ろうと思えるほど俺はできてない。
嫌なものは、やっぱり嫌だ。
もしそれを我慢するのが大人だって言うなら、俺は大人じゃなくていいと、やっぱり泣いた。
* おまけ *
乳首に絆創膏のお話はプライベッターに置いてます。
@ci_3510
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