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お湯が溜まったというお知らせが聞こえて、少し頭が働かなくなった俺の手を引いてお風呂場に移動した穂高さん。
突っ立ったままの俺のシャツに手をかけて、ゆっくりと見せつけるみたいにボタンを外していく。
「誠のシャツってこんなよれてた?」
「泣き疲れて、スーツのまま、よく寝てた」
穂高さんは渋い顔して俺を見下ろしてるけど、仕方ない。
「慣れないところで、やっぱり少しは気を張ってて。ようやく休みだと思ったらほっとしたけど、穂高さんはいなくて、寂しくて、泣いてるうちに寝てた」
「電話くらいしたらいいだろ」
「………声、聞いたら、会いたくなるじゃん」
「この時期だから行ってやれたけど」
「っ!?」
そんなバカな!!!
あ、いやでもでも。
「誠って遠距離向かねえな」
「うぐっ」
「甘えたで寂しがりのくせに連絡はほとんどしねえし電話はほぼなし」
「ぐっ」
ザクザクと俺に言葉の矢が刺さる。
剥き出しの肌にグサグサ刺さってくるその言葉には覚えがありすぎるし、なんなら多分、毎度それが原因で俺は振られてきた。
………あれ、俺反省したはずだけど繰り返してない?
「っ!?!?やだっ!!!」
「っ、狭いんだから急に抱きつくな」
「やだやだやだ!別れるとか言われても聞かないからね!やだから!浮気なんてしてないもん寂しくて泣いてたもん電話したら会いたくて仕方なくなるから我慢してただけけだから!!!」
「事実を言っただけで責めてねえよ」
「………」
ほんとに?と疑いの眼差ししか向けない俺に優しい笑顔を浮かべた穂高さんは、ほんとにと安心させるように言って俺の頭を撫でた。
「寂しいのってお互い様だろ」
「う、ん?」
「俺も意地張らずに会いに行けばよかったな」
「………」
「かなり泣いた?」
「ゔっ、ううっ、だいずぎっ」
泣いたよ、泣いて泣いて疲れ果てて寝てたよ。
抜いても抜いても満足できなくてそっちの意味でもいっぱい泣いたよ。
「流石に俺は泣いたりはしないけど、泣いたまま寝かせるくらいなら行ってやれば良かった」
そうして俺の頭を撫でている手も、その声も優しい。
俺がくしゅんとくしゃみをしてしまったせいで穂高さんの体から引き離されて、ほかほかと湯気で満たされた浴室に放り込まれてしまった。
お風呂に入ると、暖かいシャワーを頭からかけられて、自分でするより丁寧に頭を洗ってもらう。泡を流す時は目に入らないようにしてくれるのもすごく丁寧でいい。
「穂高さんにもシャンプーする?」
「やめろ、恐怖しかねえよ」
ひどい、そんな心底嫌そうな声で言わなくても。
そう思うけど否定はあまり出来そうにないのが俺だ。
穂高さんは自分の頭を洗う前に俺の体を洗うらしく、タオルにもこもこと泡立たせていく。
そして、手、腕、首と丁寧に泡を乗せて洗ってくれる。ホテルのものと違い、柔らかいタオルが肌を滑って気持ちがいい。
「あ」
「うん?」
「ここ、剃っていい?」
「いいけど、必要?」
「中途半端に生えるくらいならないほうが良くね?」
「俺はもうどっちでもいい、そこに未練がない」
もうツルツルにされてどのくらいだろう?
出張とかじゃなかったら、穂高さんがちゃんと手入れしてくれていたけど、このひと月は放置。
あってもなくても変わらない下生えだから、穂高さんの好きにしたらいい。
「フェラするときに口に入ってくんの嫌いなんだよな」
お前は?って聞かれるけど、余計な心配だ。
おっきしてないときならまだしも、おっきしちゃうとよっぽど頑張らなきゃそこに触れないし。頑張って咥えてえづくのもやだし、穂高さんは俺の頭を抑えてくることはあるけどそこまで強引に入れてきたりもしないから気にしたことがない。
「どうした?」
「どうせ俺のおちんちん可愛いもん」
「ぶっ、くくっ、」
むすっと答えた俺に、笑いが堪えられない穂高さんの手が震える。だけどその手は少し伸びた下生えをさわさわしていたから、俺はむずむずしてしまって、笑ってないで早くして!と怒ったふりをした。
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