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2-151.
半ば……いや、完全に強引に押し付けられた誕プレを渋々持ち帰った俺は7時半なんて早い時間に帰って来れたのに妙な疲れがある。
「ただいまぁ」
へろへろと玄関に座り込んで、のろのろと靴を脱ぐ。
そんな俺の背中にはおかえりって声が扉越しに聞こえて、少しだけ疲れが抜ける。
のんびりと廊下を歩いて、リビングに入るといい匂いが広がっていた。
ぐぅぅう
と美味しそうと返事をした俺のお腹。
穂高さんに聞こえてなかったらいいなと思ったけど、ぶっと噴き出す声が聞こえたから、聞かれているに違いない。
そして、笑い終えた穂高さんが手洗っておいでと言ったから俺はムッとしながらも手を洗いに行く。
そうして戻ってくると、美味しそうなご飯が用意されていた。
「今日なんか疲れてね?」
「うーん、仕事はまあ、いつも通りだよ」
「?」
「帰りにね」
「うん」
「誕プレを貰って」
その後に俺ははぁとため息をつく。
穂高さんはなんで?と言いたげな顔だけど、そりゃ当然だ。プレゼントを貰ってため息とか失礼極まりないと分かっているけど、ため息をつくしかない。
「お礼に、ゴム押し付けてきた人がくれた」
「碌なもんじゃねえだろ」
誰から貰ったかをいうだけで穂高さんまで顔を顰めた。
ご飯を食べ終わってから話してよかった。せっかくのご飯が悲しくなっちゃう。
「何貰った?」
「………ローション」
「要らねえな」
「穂高さんってやっぱりあのローションが好きなの?」
「乾きにくくてベタベタしないだろ」
言われてみると確かに。
乾きにくさに関しては他をほとんど知らない俺は分かんないけど、ベタベタしないのは体感として分かる。
拭いたら気にならないそれはベタベタとは程遠い。
「俺はなんでもいいんだけどね」
「だろうな」
そう言いつつも俺がリュックから取り出した紙袋を覗く穂高さん。どうせ使わずに捨てるのになぁとただ見守る俺と違って、ふっと口角を上げて笑った穂高さんがいて、俺は嫌だよ!と叫んでおく。
「まだなんも言ってねえよ」
「絶対嫌なこと考えた!」
「そうでもないって。使えばよくね?」
「いつものでよくない?」
「温感タイプとか俺じゃ選ばねえよ?」
「温感タイプ?」
「ひんやりしないやつ」
ほほお、と相槌を打ってみたけど、すぐに俺は首を傾げる。
「そんなに冷たかったこと、ないよ?」
穂高さんは俺に直接かけたりせず、自分の手で馴染ませてくれる。それこそ、もったいないくらいの量だって。
「まあ変なことには使わない」
「そんなバカな!」
もうやだ、って言うか温感ってなに。
普通で良いんだよ、普通で。
そう思っても、穂高さんがやると言ったら折れないのは知ってる。それに、俺の想像の限りではローションで痛い思いをすることは、多分きっとない、だろうと諦めた。
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