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2-152.
そんな誕生日から好き数日経った頃。
家に帰ると穂高さんが真剣に何かを読んでいる。
本とかじゃなくて紙。
「ただいま」
「おかえり」
そう言って俺を見た穂高さんは、自分が見ていたであろう紙を俺に渡す。
なになに?と読むと、それは穂高さんが購入した新居に関するものだった。
「穂高さん」
「うん?」
「竣工って出来上がりってことでいいの?」
「そう」
「予定通りだね」
「だな。引っ越しどうする?」
「………8月か、10月かな?」
これを見る限り8月のお盆あたりからは入居出来るみたいだし。でも8月が難しかったら9月はスルーして10月にしたい。9月は穂高さんが忙しくなる時期だから、そんな時にわざわざ引っ越しなんて大変なことを盛り込む必要はない。相手が俺だ、片付けると言いながら困らないからしばらく段ボールを片さないなんて普通に考えられる。かと言って穂高さんはそんなのきっと嫌だから、なんだかんだ俺の分までやると思う(俺がやれよって話なのは頭の中ではわかってる)。
「9月は遠慮してくれてんの?」
「うん。だって、忙しいでしょ?疲れたままここに帰ってきたらどうするの」
「………流石にそこまではないだろ」
そう返事をする顔は苦々しい。
毎年のことながら、その時期だけは残業をしている穂高さんだから疲れた頭は何も考えずになれた道を通って帰ってくるかもしれない。
「これ届いてたの?」
「あー、届けてくれた」
「前田さんかー。ちょっとは雰囲気マシだった?」
「クマはマシ。でもどうでもいい」
心底どうでも良さそうな声にちょっと思うことはある。
例えばそれが俺だったらってこと。クマを作った俺を見て、どうでもいいとは多分、絶対言わないのが穂高さんだろう。
「なに?」
「ううん、なんでもない。でも、引っ越しって言ってもすることたくさんあるよね」
「まあな」
「8月なら、お盆だったら連休は取れると思うよ」
「職場いいのか?」
とそこですかさず仕事の心配をしてくれるのはさすがだ。
俺が入社してから、俺はお盆やゴールデンウィークをできる限り出ているから、引っ越しするのですみませんって言えば多分休ませてもらえると思う。
これまでも出ますって言っても休んでいいよと言われてきたし、その辺りは要相談だけど。
「家具はある程度移動させるとして、家電買い足さないとな」
「家電?」
「リビング広くなるしからエアコン効き悪くなるだろうし」
「この家のエアコンは?」
「穂積にやる。移動費用だけ穂積持ち」
「?」
「一緒に住むらしいぞ」
「待って俺聞いてない!」
「っ、うるさい」
いや、聞いてないよ?
悩んでるのは知ってたけど聞いてないよ?どういうこと!?ミホちゃんお兄ちゃんっ子にも程があるくない!?
「お前に相談しに来てたよ」
「???」
いつ?と考えるけど思い当たることがない。
ミホちゃんは俺の仕事と帰宅時間を知っているから変な時間に来たりはしないと思う、んだけどなぁ。
「お前が出張行ってる間に来てさ」
「それは、申し訳ない」
「長期的に居ないって言ったら、ポツポツ俺に話し出したけど、俺は誠ほど穂積の背中押してやれないからな」
そんなこと、ないんじゃないかなぁ。
だって、もし背中を押せてないならミホちゃんがそれを決めたとは思えない。穂高さんの優しい愛情がミホちゃんに届いたんだと思う。
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