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扉にカードキーを翳すと当然だけど扉が開いた。 なんならそれでエレベーターを呼んでくれていたらしくて、エレベーターまで降りてきた。 こんなの聞いてないぞと思うけど、ありがたいサービスに俺は感謝する(乗り込んだエレベーターでは自分が降りる階が既に選択されていた)。 そうして自分の住むフロアに入り、どっちかなとキョロキョロ首を動かすと、朝に見た引っ越し業者のユニフォームが見えた。 「穂高さーん」 「おかえり」 「ただいまぁ」 そっか、今日からここで「ただいま」「おかえり」なんだもんね。 「搬入終わった?」 「家具はまだ。誠にも配置見せようと思って、間に合って良かった」 穂高さんが家の中に案内してくれるけど、各所各所に段ボールが置かれていた。 きっと場所ごとに正しい段ボールが置かれているに違いない。 「こっちも暑いねぇ」 「エアコン業者はもうちょいで着くって」 「お昼ご飯は?」 「ちゃんと買ってきてるから後で好きな方選べ」 「穂高さんとお弁当食べるって滅多にないよね」 「今日の夜も作る自信ねえな」 「引っ越し祝いにお蕎麦屋さん行かない?」 配るもんだろ、と言いながらいいなって顔をしているからきっと夜は蕎麦を食べに出るだろう。 こんな暑い中引っ越しして、片付かない家でご飯を作るより全然いいと俺は思う。 「すみませーん」 「はい」 「大きな家具搬入していって大丈夫ですか?」 「はい」 小さな荷物が終わったのか、今度は大きなものがやってくるらしい。 テレビボードやダイニングテーブル、ベッド、エアコンや洗濯機みたいな大きなものが続々と部屋の中に入ってくる。 真新しい部屋に段ボールと剥き出しの家電、本当に今日からここに住めるの?と俺はかなり不安になった。 「穂高さん」 「どうした?」 「本当にここに住むの?」 「いや?」 「いやっていうか、今夜までに住める状態にできる自信がない」 「エアコンと洗濯機は業者来たらすぐだから。とりあえず寝室とキッチンと洗面室どうにかすりゃなんとかなる」 「なるほど?」 そう、なのかな? まあ、いざとなれば買いに行けばいいしとダメな開き直りをして俺は荷物に手をかけた。 穂高さんが早めに開けるものと分かりやすくマークを付けてくれているおかげで、開けたらいい段ボールはすごく分かりやすかった。 寝室のものだと、布団のシーツやカバー類、充電器など。 俺がわかる範囲で、これまでと同じように直していく。 その途中、ちょっとえっちなものがあったのは見なかったことにする。これを急ぎの中に入れてていいのかはちょっと分かんないけど、初夜には欠かせないものだ。

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