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朝からせっせか段ボールを開けては片して、開けては片して。 途中出てきた時計をどこに飾るかとうんうんと悩んで、ここだと決めて脚立を取り出すとキッチンから慌てた様子で穂高さんが出てくる。 「誠ストップ」 「ふえ?ここじゃダメ?」 「ダメじゃないけど降りろ」 「へ?」 「こんな物いっぱい転がってるところで脚立なんて使うな」 そう言われて足元を見る。 それなりに段ボールやそこから出されたものが出ているけど、脚立の脚の下に何かを踏んだりは絶対にしてない。それでも気になるのか、穂高さんの苛立ちが伝わったので俺は大人しく脚立から降りる。 「こういう時は俺を呼べよ」 「自分でできるよ?」 「脚立無しでできるから」 そう言われるとどうしようもない。 そもそも穂高さんが高すぎるんだって。時計をかけるような高いところも腕を伸ばしてなんとかなるってそうないからねと心の中で文句を垂れる。 「ほんと危ないことはしなくていいから、な?」 「………な?じゃないよ」 「誠が脚立から落ちるよりマシ」 「落ちたことないよ」 職場じゃ普通に使ってる。 上の方のものを取るときとかに使う。 「いいんだよ、俺なら乗らずに済む。それなら甘えとけ」 「………俺ももう少し背が高かったらなぁ」 「少し?」 「もおっ!」 少しじゃ全然たりないけどさ! 別にそんなに気にしたこともないけど。 「いいもんね、標準サイズだと服に困らないんだよ?」 「あ、近いうちスーツ取りに行くか」 「出来たの?」 「火曜に連絡あったけど、微調整が必要かどうか見るために誠本人も必要だからな」 「お盆やってる?」 「後で調べとく」 こうして話をしてしまったタイミングで、小休憩を挟む。 いくらエアコンを入れているとは言っても、段ボールを片していく作業は埃が舞うから窓は開けっ放しになっている。そのため涼しい風と生ぬるい風にサンドイッチされているみたいで、快適とは言い難い。 「めっちゃ汗かくほどじゃないけど暑いねぇ」 「夏だしな」 「あんな窓全開で蚊入ってこない?」 「この高さじゃ俺らが連れて来ねえ限り大丈夫」 「そうなんだ?」 蚊ってあんまり高いところには自分で飛んでこれないの? これまでの俺の暮らしって改造2階建か2階建てのアパート(穂高さん曰く社畜専用)か穂高さんのアパートの3階だもんなぁ。 こんな8階なんていう高いところに住んだことがない。 「虫系って高いところ来ないってこと?」 「いや、そうでもない。アレは最上階でも出ることあるから後でホームセンター」 「?」 「また配管埋めろ」 そこはお願いじゃなくて命令なのが穂高さんらしい。 穂高さんの苦手なものを俺が苦手じゃなくてよかったと思っているから、出来る限りのことはするつもりだ。 「あれ、それなら洗面台の下ってまだ何も入れないほうがいい?」 「そうだな。キッチンは全部引き出せるから入れてるけど、重いからやる時声かけろよ」 「はぁい」 そうして、小さな予定を増やしつつも引っ越しは進んだ。

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