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第27話 怖がりな君は

 少しだけ君は好きじゃないんだろうなぁって思ったんだ。  なんていうか、言い方が少しだけね。そんな感じだった。  ――尻孔のほうが痛い時とかは口でして誤魔化して済ませてたし。 「ン、ふっ……ん」  そう。済ませてたって言ってたから、そのさ、過去の相手には義務っぽくやってたように受け取れた。 「ン、んっ……ン」  そんなに乗り気じゃなさそうだったから。  ――いいよ。公平、無理しなくて。  そう俺は君に言ったんだ。させるつもりは毛頭なかった。けれど、君は、なんで? って、甘い声で尋ねて、首を傾げながら、俺のしっかり勃ち上がっていたそれの先端を掌で撫でた。手で握って数回扱かれただけで、暴発しそうなそれを、君は。  ――ン……。  ぺろりと舐めてから、ゆっくりと口に含んだんだ。 「ン、んんんっン、ン」  とても丁寧に口の中で濡らして、先端にキスをして、裏筋のところを唇でなぞってから、また口いっぱいに含んで。  たまにその口から離しては、鼻先がペニスに触れるのもかまわず、うっとりとした表情でキスをする。そして、また丁寧に舌を添わせながら、熱く、濡れた口の中で扱いてくれる。  きつく、柔く、唾液を絡ませながら、やらしい君の舌に溶かされそうなくらいに可愛がられてる。 「公、平」  自惚れかもしれないけれど、君はとても愛しそうに俺のを口でしてくれてる。以前は義務めいていた行為を、今の君は、大事そうに、丁寧に舌で舐めて扱いて。 「公平……」  口でしている君さえも気持ち良さそう。そんなふうに、見えるんだけど。 「も、公平」 「……ン、あっ」  もう平気だよ、ってさ、何がどう平気なのかわかんないけど、君が気持ち良さそうに俺のを口に咥えてるところっていうのは、かなりクルものがあって、つまりはあまりもたなくなるから。俺のを可愛がってくれている頬をそっと撫でて、顎を指でくすぐった。 「っん」  唾液でびしょ濡れになったそれを口から、名残惜しそうに離したりしたら、さ。 「照葉さん」  うっとりなんてされると、もう。 「萎えなかったの、嬉しい」  たまらない。 「公平」 「ここ、すごいビクビクってしてた」  微笑みながら、君の口の中で暴発寸前まで昂ぶってたそれの先端を指先でくすぐらないで。 「初めて……フェラ、するのが気持ちイイって感じたの」  そんなことを言いながら、指先でいじった先端にキスなんて、しないで。煽られまくる俺を尻目に君はコテンと横たわり、布団の上で、恐る恐る身体を開いてみせた。 「あの、照葉、さん……」  あぁ、もう、本当に、君はどうしてそう怖がりなんだろう。 「ここ、さっき、お風呂で、ほぐしたから、入る、よ」  どうして、そう、不器用なんだろう。 「照葉、さん?」 「ダメ」 「え? ちょ、照葉さんってばっ」 「ほぐすって時間かかるんだろ? ネットで調べた。君のここ」  調べたさ。君の恋人になれた時から男同士のセックスの仕方なら調べて知ってる。  女じゃないんだから濡れない。挿入されるように身体ができてるわけじゃない。そこは、女性のようには繋がれない。  時間かけて、そこをほぐさないといけない。  でもそれはきっと女性としかしたことのない俺にはとても面倒だろうから、飛ばしてしまって大丈夫。そう言いたいんだろう? そこを俺が指でほぐすなんてことしなくていい、とか思ってるんだろう? 「ちょ! やだ! 触んないでいいってば!」  もう君のその怖がりなことろ、不器用なところ、何度愛しいと告げても、それでもまだおっかなびっくりで俺に抱かれようとするところ、そんな全部がさ。 「そんなとこっ、汚いし、面倒なんだって。あのっ」  ほらやっぱりそうだった。本当に、もう君は。  けれども、そんな不器用で、少し面倒なくらいの怖がりなとこも可愛くて。 「好きなんだ」 「!」 「好きな人だから、君とセックスしたいんだよ」  そして、その好きな人が男だから、その仕方を調べただけ。 「公平と、セックスしたくて調べたんだ」 「っ」 「教えて、公平」 「ぁっ……」  君のここが、俺とセックスして気持ち良くなるための準備の仕方を。 「あっ、ン……ン、照葉、さんっ」  二人でセックスするんだから。 「あ、ぁっ……ン、ぁ、もっ、んんん」  前立腺を指で撫でて、小さな孔を二本の指で広げると、一度達して精液にとろりと濡れたペニスが俺の手の中で身悶えた。 「ンんんっぁ、も」  柔らかくて熱くて、君が俺の名前を呼ぶ度に切なげに、そこが指を締め付ける。物欲しそうに中が絡み付いて、しゃぶってくれる。 「も、へーき、そこ、本当にもう欲しくて、切ない」 「公平」 「これ、欲しい……よ」  そう甘い声で呟いて、硬く張り詰めたそれに手を伸ばす。 「照葉、さん」 「?」 「よかった。硬くて、嬉しい」  華奢な君を潰してしまわないようにと手を付いた。その手に額を擦り付けて、本当に嬉しそうに微笑みながらそんなこと、言うんだ。 「公平」 「あっ」  指を抜くと、寂しそうな声を出すから、つい笑っちゃったじゃないか。 「照葉さん? な、なんで笑ってんの? あのっ」 「いや、あまりに可愛かったから」  可愛くてたまらなかったから、今から繋がるためにゴムをつけて、その事に真っ赤になった頬にキスをして、苦しかったりしたら言ってって囁いた。それと。 「優しく、できなかったら、ごめん」  そう言った。こんなに細い腰を掴まえて、脚をこんなに大胆に開かせて。 「ぁっ……」  小さな孔を抉じ開けるから。 「あぁぁっ!」  止めてあげられないから。 「あ、あっ……ぁっ……ン、ふっ、ぁ」  君の中に。 「中……あつっ」 「あっ! 照葉さんっ」  ようやく入れてもらえた。 「あっン」  ずっとこうしたかった。 「しょ、よ……さん、俺の、中、イイ? 気持ち」 「あぁ、すごく」  身じろぐと蕩けた声をあげて、ペニスをまた嬉しそうにピクンと揺らす。  ここが君の内側。あったかくて、熱くて、狭くて、柔らかくて。 「気持ちイイよ。公平の中」 「俺も……気持ち、いい……ここ、に、照葉さんがいるの、ど、しよ」  言いながら下腹部をそっと撫でた。 「すごい、嬉しい」 「……」 「ずっと、こうして、欲しかっ、ぁっンっ、ぁンっ……ン! あぁぁっ、そこ」  最初、おっかなびっくりでさ。ちっとも懐いてくれそうになかった。手を出すとびっくりして飛び上がってしまうし。撫でたいって手を伸ばすと慌てて逃げ出してしまう。けれども俺のそばに来てくれる。 「あ、やぁっン、ん、そこ、気持ち、イイっよ、照葉、さんっ」  毎日、同じ時間、決まって君がひょっこり顔を出してくれるんだ。  待ち遠しくて、待ち遠しくて。 「あ、あ、好き、照葉さんっ」  三時がとても楽しみで仕方なかった。 「あ、ン奥、ィっちゃうっ」  君が気に入ってくれるだろうかと、新メニューをいつでも考えて。それを食べた時の君を想像する。 「あ、ぁっ、イっちゃう、よっ」  うちに住んでくれるってわかった時、どれだけ嬉しかったか知ってる? 「ン、ぁ、ダメっ、も、イくっ、ぁっ……照葉さんっ」  踊り出したいほどだった。走り出して、街中の人に言いふらしたいくらいだった。 「あ、あ、あっ……ぁ、あ、あぁぁぁぁぁあ!」  その君が今、腕の中にいる。そのことにどれだけ感動してるのか、君は知らずに言うんだ。嬉しそうに笑いながら、繋がれたことに頬を染めながら、俺にしがみついて、甘く啼きながら。 「あ、ン……しょ、よ……さん」 「っ」 「ン、ぁ、ンんんっ」  両手を広げて、俺にだけ笑ってしがみついて、耳元で。  ――好き。  そう小さく囁いて、俺を抱き締めてくれるんだ。

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