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第38話 これは平凡でありきたりなただのデート

「うわっ! 照葉さんっ! すごいよ!」 「あぁ、先週末からって言ってたっけ」  駅の改札を出ると正面にある時計塔から光の線がスーッと、ロータリーに等間隔で並ぶ街路樹へと走っていた。  イルミネーション。まだ十一月なのに、街はもうクリスマスカラーに彩られてる。少し気が早い気がするけれど、点灯式も先週末あったらしい。けれど店があったから、公平に見せてあげられなかった。  駅前のロータリーの歩道が左右共にLEDランプがアーチ型に連って光のトンネルになっていた。 「うわぁ…… すごいすごいっ」  ただの明かりなのに君が嬉しそうにすると、途端に特別な光に思えてくる。  きっと昨日まではここも人がすごかったんだろう。でも今日は月曜だから人もまばら、というか、仕事帰りの人たちはイルミネーションにチラッと視線を向けただけで、それぞれの家路へと忙しそうだった。 「照葉さんっ!」 「……好き? イルミネーション」 「うんっ、好き……かな」  公平だけがその光のトンネルに歓声をあげていた。 「あんま、男同士でこういうとこ来ないでしょ? デートなんてガラじゃないし」 「……でも、これはデートだよ」  朝から遊園地で一日満喫しておいて、デートじゃなかったらびっくりだ。その締めくくりがイルミネーション鑑賞。どこからどう見たってデートでしかない。  ただの、普通の、ありきたりなデート。  こういう時は、接客業してる利点だなって思う。どこに出かけるのも平日だからさ。そうたいして混んでいないんだ。遊園地のできたてほやほやの新アトラクションだって、ほとんど並ばす乗れるし。っていうか、今日乗ってきたし。しかも三回も。君は怖がりなくせにああいうのは大丈夫なんだ。嬉しそうに楽しそうに列に並んでたっけ。  でも、やっぱり怖がりなんだ。  デートだよ、と改めて言われてホッとしてる。ホッとする必要なんてないのに。 「今日、楽しかった……」  いつか、君が怖がらないで、それを言えるように。 「明日も楽しいよ」  俺は君に染み付いた寂しいとか悲しいとかが全部薄れてなくなってくれるまで、何回だって言う。今日も明日も、明後日も、ずっと楽しいって。 「照葉さんは? イルミネーション好き?」 「どう、かな」  デートでこういう場所、もっとちゃんと有名なところだけれど、イルミネーションには行ったことがあるよ。あるけど……。 「別に、かな」 「そうなの?」 「今まではね」  だってただの明かりだ。キラキラしてるかもしれないけど、だからってそう寒空の中、手がかじかんで痛くなるのを我慢してまで見てもなぁって、実はさ、ちょっとだけ思ってたんだ。  今までは。  でも、今は。 「今は、楽しいよ。イルミネーションを見てる公平を眺めてるのが、すごく好きだから」  さすがに、これはくさかったかもしれない。イルミネーションよりも君を見ていたいとか。でも、ホント、自分でも驚くけれど、割と本気でそう思ってるんだ。 「もう十一月だと寒いな。手……公平」  手がかじかんで痛くなるのを我慢しなくていいんだし。 「え、けどっ」 「デートなんだから」  だって、寒くて手が冷えたら、君に温めてもらおう。こうして手を繋げば、ほら、温かい。 「夕食どうしようか」。公平は何が」 「鍋! 鍋がいい! 照葉さんっ」 「オッケー」  そしたら葱を買って帰ろう。肉も魚もあるし。君の好きな餅巾着も、買っていこう。それから――。 「やた! 鍋!」  それから、たくさん、君の好きなものを詰め込もう。君は鍋を食べるととても嬉しそうに頬を赤くするからさ。 「あっ……ン、照葉さんっ」 「ここ、好きだよね?」  腰をクイッと動かして、君が悦ぶ場所を突いた。 「やぁンっ」  途端に零れる甘い悲鳴が可愛くて、君の中でまたほら暴れ出す。 「あ、やっ、おっきくしたら」  仕方がないよ。君を抱いているのに、興奮しないで、なんて無理なことを言わないでくれ。  大きく開いた脚、内側にはこの前抱いた時の名残がまだしっかり残ってる。太腿の内側に歯を立てて甘噛みした痕。 「あ、ああああっ……ン」 「やらしい」  腰の辺りに枕を置いて、繋がった場所が、俺のペニスを根元までしっかり咥え込んだ孔をしっかり見つめる。隙間なく咥えてくれたそこの視覚的やらしさに当てられて、もっと君の中でムクムクと熱が膨らんだ。 「あぁあ」 「公平」 「あ、あ、あ、乳首、らめっ」  腰を小刻みに動かしながら、ピンと勃起した可愛い粒を二つ摘んであげた。摘んで、君の好きな愛撫をしてあげる。 「あ、ン、そんな舐められたら、イっちゃうってば」 「いいよ、イって」  片方を舌で可愛がって、もう片方を爪でいじめる。濡れた乳首をカリカリって引っ掻くと、君の中が切なげにしゃぶりつく。 「あ、あ、ぁっ、それ、イくっ」 「っ」 「あ、やぁっン、ぁ、ンっ、照葉、さんっ、奥、来て」 「平気?」  一番深くまでいっていい? 「ン、照葉さんの、お腹のとこで感じたい」  自分から大きく脚を開いて、ここまで来て欲しいと下腹部を撫でる君にキスをした。 「奥、挿れるよ」 「ン、ぁ、あ、ああああああっ」  一番深くて狭いとこ。そこを抉じ開けると君は甘イキしたままになる。ずっと蕩けて、中も口の中も、全部トロトロに柔くほぐされていく。 「あ、ンっ」 「公平の中……」 「あ、ぁ、照葉、さんっ」 「あったかくて、気持ちイイよ」 「……ン、ぁ、好き……照葉、さんっ」  冬になる。 「公平」  君がうちにやってきてから、季節が一つすぎていった。寒くて、冷たくて、こうして抱き合ってると恋しさと君の体温がより鮮明に身体に沁み込む、冬がもうすぐそこまで、来てた。 「いらっしゃいませ」 「よぉ、照葉、元気にしてたか?」  冬が。 「……」 「なんだよー。同期の顔、もう忘れたのか? この前、会っただろ? 秋にさ、ここの近くの繁華街で」  君がいないと寒くて凍えてしまう冬が、来た。

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