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初めてのわがまま編 7 甘いわがまま
「今日、俺が、する……ね?」
真っ赤になって俯きながらそう君が呟いた。
俺の手を気遣ってくれる。ズルいよね、俺。手首の捻挫を振りかざして。
「あっ……ン」
君のやらしい姿を見たいなぁなんて。
「あっ……照葉、さっ……ンっ」
ズププ、と自分の体重を上手に使って沈み込んでいきながら、公平が背中を逸らせた。ゆっくりゆっくり全部を咥え込んだら、貫かれる心地に甘い溜め息を零してる。
「あっン」
甘い声に、熱くて狭い君の中の心地良さにたまらなくなって、君の細い腰を両手でしっかり掴んで支えながら、腰をほんのちょっとだけ、クンって上へと突き上げる。
「ン、だめっ、俺が、するんだってば」
叱られてしまった。
「待って」
キュッと締め付けながら、ゆっくり上へ。
「あぁっ」
今度はゆっくり下へ。
俺は狭くてきついけれど柔らかい君の中にまた包み込まれて、極上の光景と心地に蕩けてる。
「あっ……ん、照葉さんっ……気持ち、い?」
「ものすごく」
「ぁ……ん、よかった」
遠慮がちな、けれど、やらしい腰使いにうっとりしていた時だった。
「俺ね……」
「公平?」
「わがまま、なんだ」
「……」
ぽつりと君が呟いた。
「優しい、でしょ? 照葉、さんって……」
「俺?」
「うん。優しい」
「……」
「みんなに優しい」
俺の胸の辺りに掌を置いて、鼓動を確かめるように胸を撫でて、少し髪が長い君がそうやって俯いてしまうとこの角度からでもその表情は見えない。
「それが少し、イヤで……」
「……」
「いつも誰かを助けてて、いつもみんなに優しいでしょ?」
いつも遠慮がちで、いつもどこか寂しげで、でも人に優しくできる君のことが好きで好きでたまらなかった。けれど最近、そんな君がもう少しわがままになってはくれないだろうかと、思ってみたりもしてた。
だって、疲れたぁもう仕事したくない、ダルい、つまらない、なんてことを一度も口にしたことがないから。
俺は、あるよ。もちろんある。
あーダルいなぁ、今日は買い出しサボりたいなぁ。あぁでも、昨日は大繁盛だったおかげで、具がいくつか売り切れごめんだったっけ。そっかー。じゃあ行かなくちゃ。って思ってみたり。眠いなぁとか。面倒だなぁとか。
「みんなに優しい人だから、あんな俺にも優しくしてくれたのに」
「……」
「みんなじゃないのが良くて」
「……」
「俺にだけ、優しいならいいのにって」
そう思っちゃったんだと、小さな小さな声で君が呟く。
「俺だけのものなのに……なんて」
ごめんねって呟く君に、ごめんねと心の中で返事をした。
「わ、忘れてっ、俺、ホント、バカ、だから。みんなに優しい照葉さん大好きだよ。なんかね、こうしてたら、その照葉さんを独り占めできてるって気がして、それでっ、うわぁっ! あ、ンっ」
なんてことを言ってしまったんだろうと、胸の内を吐露してしまったことを慌てて掻き消そうとした公平を、慌てて抱き締めながら、起き上がって覆い被さった。
いきなりの体勢逆転。中をまた深く別の場所を抉じ開けられて、甘い声が自然とピンク色をした唇からこぼれ落ちた。
「あ、照葉、さんっ……手」
「うん」
「俺の、下敷きになっちゃってるってばっ、あ、あぁぁ」
下敷きになっている手を早くそこから引っこ抜いてと、急いで腰を浮かせる君をそのまま深く貫いた。
「あっ……ン」
心配していただいてる手首はね。
「そんなに痛くないよ」
「ぇ?」
「ごめんね。ウソついたんだ」
「あっン」
ね? しっかり君の細い腰を鷲掴みにしてるだろ?
「かまってもらおうかと思って」
目を丸くして驚いてた。
確かにみんなには優しくしてるかもしれない。
「俺って結構わがままなんだ」
「……」
「公平にだけは、ね。だからさ、公平ももっとわがまましていいよ」
なんでも言ってくれていい。疲れた、あれしてこれして、ねぇこれもしてって、わがままになっていい。そんなわがままをする君のことをきっと誰も知らないだろうから。お豆腐屋さんのおばちゃんだって、他のみんなが知らない君を。
「見たい。わがままな公平」
だって君はみんなに好かれてて、みんなの人気者で、すごく独り占めできる時間が少ないんだよ。だから振り向いてもらうために必死なんだ。君をどうにかこうにか独り占めできないかと。
「……い、いいの? 俺っ」
「もちろん」
ほら、さぁ、言ってみて。
「あ、このまま、たくさんして、欲しい」
「いいよ」
「あぁ!」
ぎゅっと抱きつく君をもっと強く抱きながら奥を深く貫いた。
「あっ……俺も、見たい、もっと、わがまま、な照葉さんが、いいっ」
あの手この手で君をこの懐に誘き寄せようと一生懸命なんだよ。
「あぁっん、あ、照葉さっ、ン」
「公平」
「あんっ……あ、あ、あ、あ、そこ、好きっ、もっとして、欲しい」
君のわがままは。
「あっ、照葉さんっ、そこっも、好き」
美味しいご馳走みたいなわがまま。
「あ、あ、あ、あ」
本当に。
「あ、照葉さんと、一緒に」
「っ」
「イキたいっ」
君がくれるたくさんの甘くてご馳走みたいなわがままを今夜は独り占めできてさ、思わず、いただきますって言ってしまいそうになったんだ。
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