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第29話

乾かし終わりが名残惜しいが 「終わりました!」 と伝えてドライヤーを片付けるべく洗面台へと向かう。 洗面台の鏡の前で自分を見る 口元がずっと上がりっぱなしだった。 自分でも緩んだ顔をしていると思っていたがここまでとは… 1人で笑いそうになる。 恋人に接するような事をしたり… 自分がおかしくなったみたいだ… でも幸せだと心が感じている気がする とりあえず戻って水を飲み落ち着くか… ガチャ 何も言わずキッチンに行き冷蔵庫からペットボトルを出し彼の方はまだ見れないからそのまま横を向いて飲む 冷たい水が喉を通り胃に入ってく感じが気持ちいい… カシャッ カシャッ ん?俺の写真を撮ったのか?? と彼を見れば画面を満足そうに眺めて口元を緩めている気がする ジーーーッとこちらを見ていたら彼が顔を上げこちらを見てくる 何故か恥ずかしくなり真顔を作る 「す、すまない…」 彼が俺を撮るなら… もっと撮って欲しい… 「満足いくの撮れました?」 彼に触りたかったが何とか抑えカメラを人差し指で触れてみる 「おっ、おう…」 「それは良かったです。写真が撮りたいと思ったらいつもは直ぐ撮ってるんですよね?今日はそれを我慢したりしてました?」 「あーあぁ…」 「では、一緒に居る間撮りたいと思ったらその全てを撮って下さい。どんな写真でもです。どんな時でもです。」 「え?良いのか?君を撮ったりもするぞ!?」 「はい、虹崎さんにならどんな俺でも撮ってください」 「分かった」 切り取られたい。 彼の目に写った自分はどんなだろうか… 嬉しくなりカメラのシャッターボタンの上にある彼の人差し指を撫でてみた。 ピクッと身体が反応してこちらを見てくる 一瞬驚いた顔をしたと思ったら顔を手で覆い座り込んでしまった。 嫌だっただろうか…男に触れられて不快な思いをさせてしまっただろうか 俺も座り込み 「すいません、不快な思いさせました!?」 「違う、大丈夫だ。ただおじさんをイジメるんじゃない…」 「イジメてなんか無いですよ」 イジメでこんな事するはずないじゃ無いですか… 俺は彼の手を掴み歩き始め寝室へ向かう 「何処行くんだ?」 「もう、寝ましょう」 「は?」 「寝室へ行きます」 急にブレーキを掛けられ足が止まる 「待った待った!俺はソファで寝るから」 「ダメです」 絶対に逃がさないと、さっきより強めに引く 「いやいやいや…」 「拒否権はありません!責任取ってくれるんですよね!?」 「流石に一緒に寝るのは…」 「大丈夫ですよ。キングサイズですし、余裕で寝れます」 諦めたのか 「分かった」と素直に付いて来てくれた 「さぁ、寝ましょう」 と、とりあえず自分が寝る側の反対側に座らせる。 一瞬、悲しそうな顔をしたような気がしたが…気のせいか? そんなに一緒に寝るの嫌だったかな…

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