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(16)桑原家

 かつて両親が使っていたダブルベッドの寝室には、二人の男の喘ぎと、ジェルのねっとりとした水音に満ちていた。  紫之は腿を胸まで上げさせられ、光の雄が深く埋め込まれていた。 「ああ、ひかる、くるし、いくよ、いっちゃう」 「そうじゃないだろう、本当のことを言えよ、しの」  紫之は恥ずかしさに顔を背けて言う。 「おしり、きもちいい、きもちいいから、いかせて、もっと激しくして」 「かわいいよ、俺のしの。いかせてやるよ、天国に」  光の腰づかいがうねりからピストンに代わる。やや小柄な紫之の奥にまで叩きつけるような衝撃が走り、体内に電流の波が輪となって広がる。 「あっ、あ、だめ、そんな奥はいや、感じちゃう。いっちゃう。だめ、いく、いく――」  紫之の中に光の精が送り出されるように、紫之の腹の上にも紫之の放った白濁がとくとくと吹きあふれ、それまで散々こぼれていた透明の液に混ざり合う。  それを見て光が笑う。 「いやらしいよ、しのの腹の上」 「見るな」  むくれた紫之の横顔に強引に光がキスをする。 「光、抜いて」 「駄目。もう硬くなってきた」 「光っ」  光の目か紫之をねめつける。 「しのが悪いんだ。そんなにかわいいから。ああ、もうたまらない」  紫之は自分の中で一気に体積を増した光に顔をこわばらせる。これで三度目になるのだ。 「もう、穴がもたないよ。切れちゃう」  泣き言も聞いてもらえない。 「穴なんて下品な言葉を使った罰だ」  光の欲望が奥から引き抜かれたかと思うと、浅い紫之の急所をこねくり始めた。 「やめて、やめて、感じちゃうから。僕は光みたいに何度もいけないんだから」  涙がこぼれている。なのに騎乗位に変えさせられてまた奥を下から嫌と言うほど突き上げられて、紫之が悲鳴を上げる。 「結局、しのも好き者じゃないか」 「ひ、かるが僕を、こんなにしたのに、ひどい。あ、ん」  光の右手が紫之の股間に移った。 「素質だよ。しのには淫乱の素質があったんだ。俺と同じ血だよ」  細かくこすられて、言葉が出ない。ただ弟の上で紫之は喘ぎ、再び突き上げられながら紫之も達した。  あの角を曲がった先の桑原という家には、近親相姦という小さな籠の中に紫之(てんし)が閉じ込められ、その籠を前足に抱え込んで見守る(ケルベロス)が住んでいる。 ――了――

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