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③ 聖なる場所での淫らな時間
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「兄上……兄上……っ! やめて……っ! やめてください......っ」
『その時』
ユリウスは、本棚に手をつかせたエルンストに覆い被さるようにして、抱きしめていた。
帝国一の蔵書量を誇る、カレンベルク家の大図書室、最奥だ。
帝国が誕生して、千年。
当時から帝国は各地をそれぞれの領主が統治し、その上に皇帝が君臨している。
現在でも次々に近隣諸国が併合されて行く強い国家だ。
一方で、あまりに種類雑多な人種と習慣を受け入れたために、宗教を統一することは難しかった。
かつては、神との契約により発動し、天地をも揺るがす奇跡の御業『古典魔法』も廃れて久しい。
現在。
明かりを灯したり、火を起こしたり、飲み水の確保などの生活に必要なことは、古典魔法に頼っていなかった。
人類が世界をつぶさに観察して得た知識を元に使う技の『新魔法』……別名『科学』というもので成り立っている。
科学が発達し始めたからと言って、昔ながらの生活が大きく変わったわけではない。
一般庶民は井戸を使って水を汲み、煮炊きには、森や山で拾った薪を使う。
交通手段も、徒歩や乗馬、精々馬車といったところだ。
それでも最近では、火薬で山を崩してみたり、石炭を燃やして出来た蒸気で鉄の船を動かしたり、大勢の人間を馬より早く運ぶことのできる乗り物も出来たとか。
古典魔法では、伝説の大魔法使いでさえ出来たかどうかわからなかったことが、新魔法『科学』には、出来る。
しかも科学は、知識さえあれば、本人の才能も、神への信仰がなくても使えたため、帝国を中心に、あっという間に全世界に広がった。
結果。
帝国自体は無宗教国家になり、神官、教皇など、おおよそ神がかったものに対する役職が皆無になったのだ。
神の代わりに尊いものとされたのが『知識』だ。
人類が日々研究、研鑽を重ねた成果を綴った新魔法の元になる『書籍』の類が重宝された。
そんな世界のただ中で、カレンベルク家は、代々帝国の頭脳としての役割を担う貴族だ。
身分的には皇族の次ではあるものの。歴代の皇帝の戴冠を担う賢聖の家系だった。
ずっと皇族に寄り添い、帝国の歴史を支えてきたカレンべルク家の収蔵図書は極めて多い。
世界にあまねく存在する本の原本や、写本を収集して作りあげたカレンブルクの大図書室は、大量の書籍を収蔵していることで有名だった。
帝国の地理の変遷、歴史、最近まとめられた科学の書だけではない。
他国の神学、医学、博学、今は廃れた古典魔法や詩歌の類にも留まらなかった。
最近発明された活版印刷で刷った、安価で増産できる紙の本。
身分を超えて、誰にでも手に取って読むことが出来る思想、小説等の娯楽誌にも及ぶ。
人類の英知の結晶が貴族とは言え、たった一家の持ち物であり、一般には公開していないため、保存状態は完璧。
きちんと管理され、背表紙が綺麗に揃った本が、人の背丈の何倍もの本棚に収まる様子は、まるで神殿であるかのような犯しがたい神聖さと荘厳さがある。
様々な歴史と人類の知恵の全てが詰まった本を抱いて佇 む本棚が広大な地下室を埋めつくしているのだ。
建設当初は整然としていた図書室も、増築を重ねるうちに迷宮のようになっていた。
そんな図書室でのこと。
兄のユリウスに剣技の試合に負け、数学の試験で劣ったエルンストは『お仕置き』を受けようとしていた。
いつも物差しで打っていたエルンストの手は、今日に限って剣技の試合でケガをし、血が滲んでいる。
もちろん軽傷だったし、傷は清潔なガーゼで拭われ、適切に処置をしたので、しばらくすれば跡も残らないだろう。
それでも、そこに改めて『お仕置き』は、誰の目からしても気が引けた。
だからと言って、尻を物差しで直接叩かれるのも、結構痛い。
しかも、エルンストの『お仕置き』は、今日の二回分の他にかなり溜まっていた。
今まで散々負け続けて増えてしまった分を全部なくす代わりに、別なことをしないか、とユリウスに誘われ、これ幸いと『うん』と頷いたのが、いけなかったのか。
ユリウスの冷たい手が、エルンストの肌に触れた、と思ったとたん。驚いて抵抗する間もなく、両手を素早く縛られ自由を奪われた。
相手は、心身全てがエルンストより優れ、今の今まで信頼し、尊敬していた兄なのだ。
大きな声で助けを呼ぶことはできなかった。
いいや、どんなに叫んでも無駄だろう。
図書室の持ち主たるカレンベルク家の息子達が、勉学のために誰も入るな、と命令すれば、普段管理している司書たちは有休休暇が手に入ったのと同じだ。
『勉学の時間』が何時間になろうともあえて入って来る者はいない。
司書は臨時の休暇にほくそ笑んで退室。
一応飲食禁止になっているため、どんな時でもすかさず茶を運んでくる給仕も、執事もやって来ない。
出入口も遠く、図書室内の出来事は、誰の耳にも入らない。
声を立てれば、何事かと護衛が飛び込んで来る寝室よりも、秘密の遊びをするのに、これ以上うってつけの場所はなかったのだ。
そんな場所で、エルンストを辱しめる淫らな儀式は、始まってしまったのだ。
エルンストのシャツのボタンは、あっという間に全部外され、胸の飾りをユリウスに弄ばれる。
「ん……ふぅっ……くっ……!」
強くつままれば、痛みしか感じないはずなのに、ビリリとした刺激の奥底で、エルンストは別の何かを感じていた。
強い快楽ではない。
けれども、ソレが『何か』を知りたくて、身悶えるような焦りを感じる。
中毒性のある変な感覚で、気がおかしくなりそうだった。
気を許すとどっぷりと浸かり、身動きが取れなくなってしまいそうな淫らな刺激が嫌だった。
エルンストは必死に『止めて』と懇願したはずなのに、ユリウスの手は、更に敏感な場所へと移動した。
ズボンのベルトが外され、下半身を覆うモノが下着ごと全部足元に落ちてわだかまる。
裸になったエルンストの足は、肩幅まで開かされ、突きでた尻には、ローションが塗られた。
そしてユリウスの指が、すりすりと動き、自分の双丘の間を行ったり来たりし始めてもなお、エルンストはわが身に起きたことが信じられないでいたのだ。
ユリウスの指の行き先の内、前の突きあたりで、エルンストの二つの果実を揺らし、後ろはまだなにも受け入れた事のない花をくすぐっている。
そんな事をされて、エルンストが最初に感じたのは、快楽ではなく、恐怖だった。
ユリウスの手は、エルンストの胸を弄んだまま、下肢の最奥に触れる。
菊花のようでありながら、普段他人には絶対に触らせない場所をユリウスの指が、上質で滑らかなローションを纏ってくるり、くるり、と円を描いたのだ。
ユリウスの指が掠るたび、ぞくり、ぞくり、と、これまでに感じた事のない何かが、エルンストの背筋を這いまわる。
いてもたってもいられない、もぞもぞとした感覚が更に高まって、エルンストが『あっ……』と高く声を上げれば、ユリウスが笑う。
「……なんだ、もう感じたのか? エルンストは、敏感だな……そもそも欲望に貪欲なヤツだとは思っていたが……」
「か……感じてなんて、ないよっ……!
それに僕は。欲望に貪欲なほど、下品なヤツじゃない!」
エルンストの言い分を聞いてユリウスは目を細めた。
「……そうか?」
「そうだよ!」
必死の返事に、ユリウスは、「ふーん」と、生半可にうなづいた。
エルンストの答えをまるで、信じていないのだ。
なぜなら、ユリウスが触れれば触れるほど、エルンストの花はヨくなっていくのだから。
じわり、じわり、と、蜜を滲ませながら、花は、素直に柔らかくなって来る。
やがて、もの欲しげにヒクリ、ヒクリと騒めき出したエルンストの花の中心に、ユリウスはくい、と中指を一本突き入れた。
その途端。
エルンストは、女のような嬌声を上げると、背筋を大きくしならせた。
「うぁっ……あああんっ」
胸の刺激で半分立ちあがりかけていたエルンストの肉の剣には、力がこもり、天を向く。
同時に、エルンストの花が、ぎゅうと閉まり、ユリウスの中指を握りしめた。
その様子に、ユリウスは、エルンストの耳元でくくくく、と笑った。
「これを『感じていない』って?
喘ぎ声の混じった嬌声は『気持ちイイ』って啼いて聞こえるぞ?
それに、お前の花は、俺の中指を喰いしめて離さないのに?」
そう言って、ユリウスが、エルンストに突きさした中指をかすかに動かした途端だった。
エルンストの背筋にやるせない快楽が貫いた。
狂ったように腰を振ったのは、ユリウスの指から逃れようとしたか……それとも、もっと刺激が欲しかったのか?
どちらにしろ、ユリウスの指を喰い閉めたまま、揺れて動くことになったので、余計に刺激が増して、追い詰められたエルンストは、喉も割けよとばかりに叫んだ。
「ひ……っ! やっ……もっ……もう…止めてっ! 許して……兄上…っ!!」
「おや? 前立腺でもかすったか?
そんなにイイ反応をしてくれると、俺は嬉しいが……ここは図書室だと言うことを忘れるな。
お前の声が響けば、司書が飛んでくるかも知れないな」
どんなに騒いでも誰も来やしない。
それは、ユリウスが一番よく知っていたが、あえて口に出してみれば、エルンストの方は、青ざめた。
こんな……兄弟同士で淫らな遊びをしているなんて、間違っても知られたくなかったのだ。
自分の醜態をさらすことよりも、兄の名に傷がつくことを恐れて、エルンストの声が小さくなる。
「兄上……っ…そんな激しく……動かさな……」
「俺は全く動いていないさ。
自分で動いて、勝手に感じて、騒いでいるのは、エルンスト自身だ。
胎内に触れて、悦 がるなんて、全く女みたいだな」
ユリウスは、そう言って笑うと、今まで胸を弄んでいた手を、射精寸前まで勃(た)ち切って震えるエルンストの肉の棒に触れた。
「エルンストが『女』だとしたらこんなもの、要らないよな?
しかも、このままじゃ、我慢の足りないお前だからな……
勝手に白濁を吐いて貴重な書物を汚しそうだ」
「いっ……やっ! 兄上は……何を……っ」
エルンストにとっては、いつの間にかのことだった。
ユリウスが、腕を軽く振り、袖口から、ひゅっと短剣を取りだすと、抜き身の刃を、エルンストの性器に押し当ててささやく。
「いい機会だから、コレ、この場で取ってしまおうか?」
もし『うん』と言ったら、本当エルンストの性器を切り取ってしまいそうだった。
そんなユリウス迫力は、じわじわと押し寄せる快楽に勝ったのか、どうか。
息を飲むついでに喘ぎ声と、次の言葉を飲み込んで固まるエルンストを見てユリウスは、笑った。
「怖がるんじゃないよ、莫迦なヤツ。愛しい弟を俺が傷つけるわけないだろう?」
「愛しい……弟? それは……一体誰の事を言ってるの?」
「本当に、莫迦だな。
俺には、エルンストしか弟は居ないはずだ。
……母上が亡き後、父上が、別の女と子供を作ったけれど、それは女の子だ。
『弟』とは、言わない」
当たり前の事じゃないか、と言うユリウスに、エルンストは激しく首を振った。
「ウソだ……っ! 本当に兄上が僕の事を愛している、と言うのなら、こんな酷い事をしないはずだ!」
叫ぶエルンストに、ユリウスは首を傾げた。
そして、笑う。
「酷い? 俺はお前にそんなことはしていないさ」
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