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⑪ ユリウスの願い

 ユリウスの欲望は、まだ無常な器具にせき止められたままだった。  一度精を放ったバルドの方も、ユリウスの胎内から出ることなく、すぐに回復する。  自ら放った白濁を潤滑液にして、バルドはゆっくりと、その巨体を動かした。 「ユリウスさま……あなたが……あなたの方が……本当にΩ性であったなら……良かったのに。  あなたが……っ、無力なΩ性だったなら……っ、わたしが……っ、あなたを……っ、さらって……っ、守ったのに……っ」  ――あなたが、エルンストさまに向ける愛より深く、淫らに。  運命の恋人『(つがい)』として、拘束出来たはずだったのに。  バルドが紡ぐ想いと共に、ユリウスの胎内に食い込んだ巨大な剣が、ゆっくりと出し入れされた。  ズッ……ズッ……ズッ……  グチュ、ズボッ、グチッ……  凶悪な肉の剣が蜜壺をかき回し、怪しげな水音が鳴り響く。  剣の先が出口に近づいた時には、胎内で放たれた白濁が、バルド自身の剣でかき出され、ユリウス穴から足にかけて滴った。  抜かずにまた力を込めて押し込めば、精は、ユリウスの最奥まで届く。 「あっ……あっ……あああっ」  バルドの激しい動きに、ユリウスは、叫び声をあげることしかできなかった。  どうせ他人に汚される運命ならば、今のうちに、犯し尽くす決意なのか。  ユリウスの胎内の麻薬のような、中毒性のある快楽にバルドは、溺れたのか。  最初は、確かに気を使って、丁寧に腰を使ってユリウスを狂わせていたのに、いつの間にか自分のための悦楽を優先させていく。 「もし……ユリウスさまが……Ω性だったなら……  溢れる種で……わたしだけの……子を孕ませ……  命に代えて……誰にも……っ、触らせ……なかったのに……!」  ユリウスの身体が、あまりに『良』すぎて狂ったらしい。  理性の弾けたバルドが、本音を叫ぶ。  ユリウスの側近とはいえ、従者のバルドが、主を攫って逃げきれるわけがない。  しかし、ただ一瞬だけでも、ユリウスの身も心も自分だけのものに出来るならば、どんなに悲惨な死に方をしてもいい。  そんな思いでユリウスを抱くバルドは、止まらなかった。  バルドは巨体を激しく揺り動かして、肉の剣の抽挿を繰り返しては、何度も何度も、ユリウスの最奥に精を放って、終わる気配がない。  バルドの泡立つ白濁で、ユリウスの身体の下に小さな水溜まりができるころ。  ノアが、ユリウスの顎を支えて、やや上を向かせながら言った。 「ユリウスさまがΩ性だとしたら、ですか……?  残念でしたね、バルド。  ユリウスさまは、私やあなたと同じ、α性です。  どんなに願っても、汚しても、あなたと一生共にいるという運命の恋人『(つがい)』には、なりません。  そして、ユリウスさまがカレンベルク家の男である以上。  当然、バルドしか知らない無垢のままでいられるわけでもありません」  ――そう。こんな風に、ね、と。  ノアは、半分勃った自分の分身を、ユリウスの目の前に出して歪んだ微笑みを浮かべた。 「……イキたいですか? ユリウスさま?」 「う……う……う……」  返事ができるほど、ユリウスに余裕などなかったが、ノアは、にっこりとほほ笑んだ。 「あなたの蕩けた表情が可愛いので、ご褒美を差し上げましょう。  私の精を吸い取り、取り込めば、あなたの魔力は、完全に戻ります。  ……しかし、困りましたね?  あなたの後ろは、バルドが使って、当分放しそうもないですし。  仮にバルドが代わってくれても、あまり元気のない私の今の状態では、このままではユリウスさまに精を届けることは、出来ません」 「うっ……う、あっ……う、なにを……しろと……?」 「簡単なことです。あなたの高貴な口で、私を愛してイかせてください。  私が達することが出来れば、ユリウスさまの魔力問題も解決する上、あなたもイけるように取り計らいましょう。  バルドに掛けた媚薬まがいな魔法も解いて差し上げます」  いつも、余裕のある抱き方をするバルドが、がむしゃらに突いて来るのはノアの魔法に狂ったからのようだ。  配下に、主が口淫で奉仕せよ、と。  どうせ、断る事は出来ないことを見越してのノアの発言だ。 「ノ……ア」  ユリウスは一睨みすると、自分からノアの欲望に口をつけた。  バルドは、愛しい主の痴態をこれ以上ないほど間近で眺めることになった。  しかし、汚されゆく姿を目の前にして、何もできずに、ただ嫉妬に狂う。 「あ……あ……ユリウスさま……わたしのユリウスさま……」  グジュ、ズボズボズボ……ッ!  バルドがますます激しく腰を振る。  その刺激がたまらない。  ユリウスは口に含んだノアの分身に歯を立てないでいるのがやっとだ、 「……っ」  魔力が籠ってるせいか、ノア自身の放つ香りのせいか、どうか。  甘美な花にも似た香りをまとったノアの欲望は、ユリウスの口に含まれた途端、バルドに負けない巨く硬い肉の剣となった。  それは、ユリウスの口一杯に広がると、喉の奥までユリウスを犯し、えずかせる。 「……っ、……っ」  定期的にやって来る嘔吐感に、身体を揺らせたユリウスの頭を抱いて、更に分身を奥に侵入させたノアが、心地よさげな声を出した。 「ああ……あなたの口は、極上な絹のようです……」 「……っ」 「苦しそうですね?  これから私も動くので、もっと苦しいかもしれませんが、私を噛んだりしたらダメですよ?」  ノアは、笑うと、自分もまた腰をゆるりと使い始めた。  グジュ、ジュボッ、ジュボッ  ジュッ、ジュッ、ジュッ、ジュッ  異なるテンポで、ユリウスは、口とアナルの両方を、同時に犯されていた。  ミルキングで、倍の快楽を味あわされて、なお。  ユリウスの欲望は、凶悪な器具に阻まれて逃げ場はなかった。  バルドは、いつまでも精を吐き続けながら、一向に萎える気配もなく、ユリウスを汚し尽そうとしている。  加えて、口内を犯し始めた途端、危険なほど大きくなったノアの剣に、喉の奥までめちゃくちゃに突かれてもはや、呻き声も上げられない。  苦痛を伴う快楽に苛まれながら、ユリウスは、ただ目の前の長椅子で、静かに眠るエルンストを眺めて、耐えていたのに。  ユリウスの視界は、いつの間にか流れて来た涙に霞んで、見えなくなっていた。  エルンスト、エルンスト……  俺の大事な、エルンスト。  お前だけは、絶対、こんな目には、あわさない。  だから、いつまでも、お前は……  ……どうして欲しい、願いだったのか。  最後の言葉を心の中で綴る前に、ユリウスの身に『ソレ』が、起きた。  ノアと、バルドが、同時にイくタイミングで、ユリウスに付けられた器具も外れたのだ。  ユリウスの目の前が、一瞬暗くなったかと思うと、次に、ありえないほどの白濁とした闇が襲う。 「うああああっ!!! げふごほっ!! かはっ……!」  ようやくイくことを許された快楽に心を壊され掛け、ノアの出した大量の白濁を全部飲めずに、むせた。  何度中に出されたか判らない、バルドの欲望の海に沈みかける。  穢れた三人分の白濁の上に、とうとう倒れ込んだユリウスを眺めて、ノアが笑う。 「ささ、ユリウスさま。  これからも、予定が詰まっております。  弟君や臣下との戯れが楽しいひと時であったとはいえ、いつまでも余韻に浸っていては、いけません。  なにしろ、これからまもなく、本番。  ユリウスさまの本当のお相手は、わが帝国の皇帝陛下なのですから」 ――

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