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決心

「兄さん、一つだけなら方法があるよ」 「…?」 「僕が兄さんの代わりに国王に嫁げばいいんだ」 「そんなことをして、もしバレた時、お前はどうなる!」 「きっと殺されるだろうね。国王を謀った罪で」 「そんなのはダメだ」 「じゃぁ、トーヤとの結婚諦めるの?」 「それも無理だから困っているんだろう!」 「だから僕が身代わりになるのが一番なんだよ」 「どうしてそんなに自分を犠牲にするんだ?」 「兄さんはトーヤと結婚を楽しみにしてる。トーヤも兄さんとの結婚を楽しみにしてる。二人は一緒になるべきなんだ。幸い、僕には兄さんみたいに心から思える人はいない。兄さんも、トーヤも、僕も幸せになるのはこれしか方法がないんだ」 アレンは自分ができることはこれしかないと思っていた。 二人の幸せな今を壊させたくない。 そのためには好きでもない国王に身を捧げるくらいわけなかった。 (最初で最後でいいから、兄さんみたいに心から好きになれる人に出会いたかったな…) それだけがアレンの心残りだった。 アレクとトーヤを見ていると、恋愛というものがいかに素晴らしいものか思い知らされたからだった。 「アレンは本当にそれでいいのか?国王に嫁いだら、もう自由じゃなくなるんだぞ?」 「いいよ。自由の代わりに贅沢が手に入ると思ったら安いもんでしょ?」 少しでも兄を安心させたいとおどけてみせたが、それが逆に兄の不安を掻き立てた。 「大丈夫だよ、兄さん。兄さんが心配することはないから」 「でも…」 「兄さんはトーヤとの結婚の準備があるでしょ?そろそろトーヤが迎えに来る頃じゃない?」 トントン、と二人の玄関のドアが叩かれる音がした。 アレクがドアを開けると、そこにいたのは最愛の人、トーヤだった。 「おはよう、アレク」 「おはよう、トーヤ」 いつも二人は挨拶をした後必ず抱き合う。 これはトーヤの国の習慣だった。 アレクはまだトーヤの国の習慣に馴染んではいないけれど、いつトーヤの国へ連れて行かれても恥ずかしくない程のマナーは身に付けていた。 「アレン、今日もアレクを借りて行ってもいいかな?」 「どうぞ、どうぞ。そのまま連れて行っても構いませんよ?」 冗談で言ったつもりの言葉にトーヤは難しい顔をして黙り込んだ。

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