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離別

「アレン…」 「兄さん、違うでしょ?今は兄さんが”アレン”なんだから」 「分かってる。分かってるんだけど…」 朝からアレクは泣いてばかりだった。 自分は愛する人と一緒になるのに、弟は見たこともない男の嫁として自分の身代わりに嫁がなくてはならない理不尽さ。 悲しくなるのも分かるが、一週間前に決めたこと。 覚悟を決めないと周りに二人が入れ替わっていることがバレてしまう。 「”アレン”、元気でね」 「”兄さん”も元気でね」 「幸せにならなきゃいけないよ?」 「うん」 「お前はいつまで経っても泣き虫だね」 「うん」 「そんなに泣いてたらせっかくの化粧が台無しだよ?」 「うん」 「ほら、トーヤが待ってる。行ってあげて」 「”兄さん”…」 コンコンと玄関の扉をたたく音がする。 アレクの迎えの者達が来たようだ。 「俺の方も迎えが来たみたいだ」 「”兄さん”…」 「またね、”アレン”」 「またね、”兄さん”」 二人は力いっぱい抱き合って離れた。

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