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アレンの出発
”アレク”は純白の花嫁衣裳で玄関の扉を開けると、白い装束を身に纏った者が十人程出迎えていた。
「アレク様、お迎えに上がりました」
「はい」
エスコートしてもらって煌びやかな黒塗りの高級車に乗り込む。
バタン、とドアが閉められ、窓から家を見る。
きっとこれが自分の家を見る最後の機会だから、しっかりと目に焼き付ける。
ちょうど道路側の窓辺にトーヤと”アレン”がこちらを見ていた。
”アレン”はまだ泣きじゃくっていて、目が真っ赤になっているのが離れていても分かる。
二人に向かって手を振る。
何か”アレン”が叫んでいるけど、防音の車の中にいる”アレク”には分からない。
車がわずかに動き始めた。
口パクで二人に最後のメッセージを言う。
『さようなら。元気で』
言い終わる前に家の前から離れてしまった。
(気付いたかな?)
心配になり、後ろを振り返ると、家から”アレン”が飛び出して、こちらに走っている。
人間の足と車ではそもそもスピードが違いすぎる。
”アレン”の姿はあっという間に見えなくなった。
(兄さん、元気でね。トーヤと幸せになってね)
口に出せない思いを心でそっと呟いた。
車は北にある富豪御用達の波止場へ向かって走った。
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