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第5話
パーティー翌日、エレンはホテルからシリウスへと向かった。シリウスというのは国内で一番大きな研究施設であり、また高等教育機関でもある。
どこかの国では、大学という施設がこれに代わる機能を持つらしい。
シリウスに着き、居室(研究室の職員室のような場所)に行くと、まずお調子者の同僚、ユラが軽い口調で話しかけてきた。
「あれっ、今日はアルクトゥールス(SP)の方、お一人ですか?」
「いや、彼はアルクトゥールスじゃない。父が雇った民間のボディーガードだ。」
「えっ、じゃあなおさら1人はやばいじゃないですかーっ!エレンさん可愛いから襲われちゃいますよ!?」
「…そういえばユラ、細胞の継代はしてくれたか?あとsiRNAを入れてちまちま阻害してメカニズム解明をするのはいいと思うが、もう少し考察を重ねて候補を絞ったほうがいい。それからレーザー… 」
「あっ、俺やらなきゃいけないこと思い出した!実験室行ってきますねー!」
“…全く逃げ足が速すぎるし、僕はかっこよくもないけど可愛くもない!”
口には出さないが、いつものように心の中で毒づく。しかも今回はヨルに笑われてしまった。
「確かにエレンは可愛いけどな。」
「えっ…?」
後ろにいたヨルに予想外の方向から突っ込まれ、エレンは動揺した。ユラに可愛いと言われるのはイライラするが、ヨルに言われるとなんだかくすぐったくて嬉しい。
「そんなことないよ…?」
と返してみたら、ほらそういうところも可愛い、と返されて、自分の顔が真っ赤になっていくのがわかった。
ちなみにふわりとした栗色の茶髪と大きな金眼をしたエレンの容姿はとても愛らしい(自覚はない)。
本人たちの知らないところで、エレンとヨルの様子が、“騎士とお姫様”と謳われることになったのも、不思議ではない事実である。
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