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第6話

エレンとヨルは着々と仲を深め、出会ってから1週間後、2人で遊園地にやって来た。 ゲートをくぐってすぐに現れた高さ約100メートルのフリーフォールを前に、エレンは大きく身震いした。 乗っている人が発している“ぎゃーっ”という声は本気で危機を覚えているように聞こえるし、そもそもあの速度であんな高いところから…。 「…あんなところから自由落下の疑似体験だなんて、何が楽しいんだ…。」 「難しいことはよくわからないがスリルがあって楽しそうじゃないか?」 エレンとは対照的にヨルはむしろ楽しそうだ。 「だって怖い… 」 「お子様の発想だな。」 「やっぱり怖くないっ!!」 「じゃあ乗るか。」 「も、もち、ろんっ… 」 「やっぱり辞めるか。あっちの馬の乗り物(メリーゴーランド)の方が楽しそうだ。」 「僕もそう思う!」 そこまでの流れで、エレンはこういうことがしばしばあったことを思い出した。 例えばエレンがストレートの紅茶を飲もうとした時、自分の方にミルクや砂糖を大量に入れたのはわざとだったのではないか。 今も、実際にはどちらのアトラクションが楽しそうかなどではなく、エレンの様子を伺ってくれたのではないかと。 この人は、大人だ。自分の足で生きている、かっこいい大人だ。 「ヨルは、僕なんかと遊園地で、楽しい…?」 ふと不安になって聞いてみた。 「ああ、とても。 俺もエレンと一緒に子供時代をやり直してるみたいだ。」 ヨルは笑ってそう言って。 それからエレンヨルの手を引き、はしゃぎ気味で次々とアトラクションを回った。メリーゴーランド、水にダイブする小さなジェットコースター、観覧車、お化け屋敷に脱出ゲーム。 お化け屋敷は少し怖かったけれど、最後の方はヨルに抱きかかえられて目を瞑っていて、むしろ幸せだった。 エレンは大人になりたい。 でも、この時間がいつまでも続いたらいいとも思う。 また次の週末はヨルと一緒に何処かへ行って、こんどはヨルのやりたいことをやりたい。 初めて今を楽しみたいという感情を抱いた。 その日1つ、エレンは多分新しい世界を知った。

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