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第11話

白崎家次男の急な死――。 その出来事に皆心がついていかず、しばらくの間屋敷には冬愛の泣き声しか響かない、暗い日々を過ごしていたのだった。 しばらくして、最初に口を開いたのは冬愛の母親、亜依だった。 「私、この屋敷を出て行こうと思っています……」 屋敷の当主でもある春馬と真冬の両親は、必死になって彼女を止めた。 「真冬がいなくなっても、ここは亜依さんの家でもある。変な気を使わなくていいんだ」 「そうよ。それに冬愛ちゃんだって、まだ小さいじゃない。私たちを頼っていいんですからね。この家には沢山の人間がいるんですから、亜依さんも安心して冬愛を育てていけるでしょ」 「ありがとうございます。……でも、少し考えさせてください」 亜依は、義理の両親に頭を下げると腕の中でぐずる我が子を大切そうに抱きしめながら、自室へと戻っていった。 「はぁ……。どうすれば、亜依さんは分かってくれるだろうか」 「真冬が亡くなって、今一番心細いのは、彼女ですもんね……。義理の親とはいえ、心配よ……。川崎、大丈夫だと思うけど、彼女の様子、見てきてくれるかしら?」 「承知致しました」 彼は駆け足で、亜依の後を追うために部屋を後にした。 川崎がいなくなり、血縁関係のある家族3人になったところで、先程まで一言も話さなかった春馬は、ゆっくりと口を開いた。 「……父さん、母さん。私に良い案があります。彼女のことは、私に任せてください」 弟の死を受け入れられず、精神的にも限界が来ていた春馬がこの時何を考えていて、自分の知らない場所で両親に何かを話していたとは、川崎はまだ知らなかった。

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