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2.発情(ヒート)

 その日、勉強に疲れた俺は、リビングでコーヒーを飲んでいた。  隆明は部活の合宿に行っていて、家にいたのは俺と、部屋に引きこもっている父だけ。  特に興味もないニュースを見ている時だった。  不意に肌がザワリと震え、身体の内側から熱が沸いてくる。  心臓がドクドクと脈打ち、呼吸が苦しい。 ――発情(ヒート)だ。 「あぁ……くっ……はぁ……」  初めての発情が、こんなに苦しいとは思わなかった。  しかも、発情を抑える薬は自室の鞄の中にある。  取りに行きたいのに、意志に反して身体には力が入らない。 ――ガチャリ  ソファーでうずくまっていると、急にリビングの扉が開いた。  父だ。  一日引きこもっていた父が、なぜかそこに立っていた。 「……とぉ……さ………」  助けを求めて手を伸ばすと、ゆっくり歩み寄ってきた父が、俺の手を優しく握る。  その時は『助かった』と思っていた。  けれど―― 「……さより……ここにいたのか?」  父の言葉が、最初はわからなかった。  確かに俺は『母に似ている』と言われた事がある。  でも俺は男だ。  髪型だって違う。まだ中学生だから、体格も全然違うのに――  それなのに父は、俺をソファーに押し倒し、服を脱がせようとする。 「や……やめて……」 「さより……さより……」  思うように身体を動かせない俺は、震えながら声を絞り出すも、父は聞いてくれない。  父の手が薄い胸や脇腹を()い、皮膚がゾワリと波打つ。 ――気持ち悪い。  男同士で――しかも親子で――  嫌悪感に涙が溢れてくる。 「ヒィッ……!」  父の指がお尻に触れ、声にならない悲鳴を上げた。  穴の縁を撫でた指が、ズプンと内に入ってくる。 「やあぁ……っ!」 「もうこんなグチャグチャにして……可愛いよ、さより……」 「あっ……ちが………あぅ……」  父の指が後孔を掻き回す度に、グチュンヂュプンと派手な水音がした。  嫌悪感と同時に、快感を拾い始めた身体がビクビクと震える。 「……こんなに濡れているなら、もう良いか?」 「あん……」  父の指が抜かれると、なぜか俺のお尻がキュンと切なくなった。  けれどファスナーを開く音が聞こえて、背筋がゾッと冷える。 「やっ! やめて! やめて、父さ――」  バキッ――!  「父」と呼んだ瞬間、表情を歪めた父に殴られた。 「口答えするな! Ωの分際で――父などと呼ぶな!」  父の言葉と殴られた頬が痛くて、俺の胸に絶望が広がる。  抵抗をやめた俺に、また焦点が合わない目で、父が優しく微笑む。 「あぁ、さより……私を受け入れておくれ……」  完全にズボンを脱いだ父が、俺の足を割り開き、俺の内にズブズブと自身を挿入してきた。 「あっ、あ……あぁん……」  俺の意思を裏切った身体が、押し入ってくる熱の塊に歓喜して、お尻がキュンと締まる。  俺は喘ぎながら泣いた。   *  *  * 「父さん、元気になったんだな。……何かあったの、兄さん?」 「……知らない」  俺が発情(ヒート)を起こした翌日から、父は普通の生活に戻った。  隆明は、父が母の事を吹っ切れたと思っているだろう。  父との事を知られたくなかった俺は、それで良いと思っていた。  その後も、隆明がいない時を見計らって、俺は何度も父に身体を求められている。  反抗は許されない。  発情(ヒート)の翌日には、避妊薬を渡された。  親子間での妊娠確率は低いとは言え、全く無いとは言い切れない。  これが悪夢の始まりだった。

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