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第5話
「学校の方はどうだった?」
晩御飯を食べ終わり、リビングでテレビを見ていた俺に声をかけてきたのは一縷兄ちゃん、どうと言われてもいつもと何も変わんねぇけど? あぁ、樹の事か……
「まぁ、大丈夫なんじゃねぇ? クラスに友達も出来たみたいだし」
樹は人懐こく甘え上手だ、入学早々クラスの友達と何かあったらと少し心配していたのだが、同じ中学から進学した元クラスメイトもいる上に、どうやら早速仲良くなれそうな友達を見つけたようで、樹はるんるんで帰ってきた。
樹を護衛してくれる友達が出来るのは良い事だ、そうすれば俺の負担は格段に減る。ちなみに中学校時代1年間は俺が面倒を見て、残り2年はクラスにできた樹の親衛隊がまるで姫を守る騎士のように樹の貞操を守ってくれたのでとても安心感があった。
高校も同じような仲間に恵まれるといいのだが……
「そうか、で?」
「で?」
しばしの沈黙、で? なんだよ? 俺がきょとんと首を傾げると兄が少し戸惑ったように「お前はどうなんだ?」と問うてきた。
「どうって、別に何も変わらないけど?」
今までそんな事聞いてきた事もない癖に突然なんだ? 一縷兄ちゃんは昔から少し言葉が足りない。α特有のカリスマ性で兄ちゃんが何も言わなくても周りが察して動いてくれる弊害なのか、俺は時々兄ちゃんが何を言いたいのか分からない時がある。
そのいい例が家族の前で彼女が出来たと宣言した時の事なのだが、双葉兄ちゃん三葉兄ちゃんが囃し立てる中、一縷兄ちゃんだけが「お前はまだ子供だろ」と言い放った。
確かに俺はまだ親に養われている子供だけど、別に彼女作るのにそれって関係ある? すぐに結婚して彼女を養う訳でもないのにさ、俺にはさっぱり意味が分からない。
そう言えばバース性の人間は付き合う=結婚みたいな所あるもんなぁ。
Ωは3か月に一度発情期というのがやって来て、その時にαと性交をするとΩはかなりの高確率で妊娠してしまう。しかもαは発情期にΩが発する発情フェロモンに逆らえない。言ってしまえばバース性はSEXに支配されている性ともいえる訳で、だからαもΩもそこの所はとても慎重で、交際には細心の注意を払うのだけど、言っても俺はβだし、彼女とは手を繋ぐくらいしかしていない清い仲だったし? 変に勘繰られる事は何もなかったんだけどな。
「そうか」と、また兄は頷いて沈黙、もうホント何なんだよっ! 一縷兄ちゃんのこういう所が本当に俺には謎で、最近俺は兄ちゃんに近寄らないようにしてるってのに、どう返していいか分かんねぇよ!
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