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第6話

「一兄、四季兄ど~ん!」 そんな言葉と共に風呂上がりの樹が俺と一縷兄ちゃんを巻き込んで抱きついてきた。ふわりと香る石鹸の匂いと温かい温もり。 樹は基本空気を読まない、だけど今はちょっと助かった、一縷兄ちゃんの沈黙に耐えかねてどうしようかと思ってた所だ。 「樹、まだ髪濡れてるじゃないか! ちゃんと乾かしてから来いよ、濡れるだろ!」 「えぇ……四季兄やってよぉ」 甘え上手な樹はタオルを頭に乗せて小首を傾げた。くっそ、ホント可愛いな。 「樹、俺達がやってやるからこっち来いって」 「ほらほら美味しいアイスもあるから、おいでおいで」 何故か双子の兄が樹を手招く。まぁ、樹は昔から家族全員に愛されてるからな。 「やだぁ、ふた兄もみつ兄も乱暴なんだもん。僕の髪って繊細だから2人にやってもらうと痛んじゃう」 「お? 末っ子が生意気な口を!」 「そうだそうだ、生意気だぞ!」 双子の兄が口を揃えてぶーぶー言うのに、樹はべーっと舌を出して「四季兄やって?」と俺をご指名だ。 「自分でやればいいだろう?」 いつまでも甘えたな弟、少し甘やかし過ぎたのだろうか? 俺が断ると樹は不満顔でぷくりと頬を膨らませたのだが、そんな会話を尻目に無言で一縷兄ちゃんが樹の髪をタオルで拭きだした。樹はそれを当然と言わんばかりに一縷兄ちゃんの前に座り込んだので、俺はその場を離脱する事にした。 「四季?」 「俺も風呂行ってくるわ」 「あ……そうか」 俺の言葉に何かを言いかけ、けれど一縷兄ちゃんはそれ以上は何も語らず「行ってこいと」とそう言った。 風呂場へ向かう俺の背に「一兄口下手すぎだろ……」と、双子の兄のどちらかが呟くような声が聞こえた。

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