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第8話

「四季兄何かあった? なんか一兄の声が聞こえたけど……」 俺と末っ子の樹は同じ部屋。5人兄弟の中で個人で部屋を持っているのは一縷兄ちゃんだけだ。何故なら双子の双葉兄ちゃんと三葉兄ちゃんは仲が良すぎて最初から部屋を分ける気がなかったのと、物理的に部屋が足りないから。 俺達の今使っている部屋に仕切りを付けて、分けてもいいと両親には言われているのだけれど、現在俺達は二段ベッド使用で、ある程度の部屋の広さを確保している。その部屋を分けてベッドをばらせば部屋が手狭になるのは当然で、それはどうかと俺達は今も部屋を分けずにいる。 「別に何でもない、それよか樹、お前もうすぐ発情期(ヒート)だろ?」 「え? あぁ、ホントだ」 慌てたようにスマホの画面を確認して、樹は「嫌だなぁ」と溜息を零した。ってか、俺が指摘するまで忘れてるってどうなんだ? 迂闊にも程があるだろ? 番相手のいないΩの発情期が始まってしまうと周りのαは問答無用で誘惑されてしまう。だから、その辺きっちり管理しておかないと危ない目に遭うのはお前なんだからな! この家の中ですら上3人の兄達は番相手がいない現状、兄弟だとかそんな事関係なく襲われる事だってあるかもしれない、俺はβだから関係ないけど、そういうの面倒くさいなって本気で思う。 「学校に慣れるまではあんまり休みたくないのに……」 「まぁ、それはもう仕方ないな。学校でヒートに突入しないようにくれぐれも気を付けろよ」 樹は枕を抱えて「はぁい」と返事を返して寄こすが、わりとうっかりな所がある弟が俺は心配で仕方がないよ。 「あぁ~あ、番相手がいればこんな煩わしさも軽減するのに!」なんて、ぼやく樹は「恋人欲し~い!」と枕を叩く。埃が舞うから止めろって! 「それにしても、そんな事言うわりに、お前誰とも付き合わないよな……」 「それはね? だって、やっぱり色々困る事も多いし、ちょっと好きだなと思っても、結婚したいかって考えたらそれは別だなって思うんだもん。兄ちゃん達と比べたら大概の奴はしょぼく見えるし、僕、目だけは肥えてるから」 そう言って樹は笑う。 まぁ、確かにな。優秀過ぎる兄達を見続けていると自然と求めるレベルは高くなる、かと言って俺は自分が誰かと比べられる事が嫌だから、そんな兄達と付き合う相手を比べようとは思わないけど、それでもやはり高望みはしてしまっている気がする。 「何処かに兄ちゃん達より格好良くて、優しくて、頼りがいのある人いないかな?」 「お前、さすがに高望みしすぎ」 俺が苦笑するようにそう返すと「兄弟でも、結婚出来たらいいのにな」と樹はぽつりとそう零した。

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