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第18話
バース性の家族の中に産まれて『キング・オブ・モブ』の名を欲しいままにしていたβの俺が意外と兄弟に愛されている事が判明して数か月、俺の生活は今日も平和だ。
「四季、俺はいつまでこの状態でお預けを喰らっていればいいんだろうか?」
相変わらず俺の定位置は一縷兄ちゃんの膝の中。もうすっかり家族も慣れたもので、誰も何も言わなくなった。樹だけは時々ぶーぶーと文句をつけてくるのだが、最近樹には学校に気になる相手が出来たようで、どうやら俺の事は諦める方向にシフトしたらしい。
部屋も樹と同室のまま使っているけれど、最近俺は兄ちゃんの部屋で過ごす事が増えている。
「それなんだけどさ、こんなにずっと一緒にいるのに兄ちゃん本当に手を出してこないんだもん、びっくりだよね。ちょっと忍耐力強すぎじゃない?」
「お前が俺にそれを言うのか?」
「俺さぁ、手順を踏んで欲しいとは言ったけど、嫌だって言った覚えはないんだけど?」
俺もさぁ、段階を踏んで少しずつと思ってたんだよ? だけど、こんなにべったり引っ付いてても一切手を出してこないから、好きって言われたのも実は俺の勘違いだったのかも? ってちょっと不安になってた所だよ。
『抱っこして』の一件から膝の中はすっかり定位置だけど、それだけで本当に何もしてこないんだよ? 成人男性としておかしくない?
「俺は四季の許可を待っていたんだが……」
「兄ちゃんは俺が『して』って言うまで本気で何もしないつもりだったの?」
相変わらず言葉の足りない兄と、行動を起こしてくれるのを待っていた俺、果たしてどちらが悪いのか?
思わず無言で見つめ合う。
「それは許可が下りたと思っていいか?」
「兄ちゃんって意外と融通が利かないって言うか、そう言う所真面目過ぎだよね」
「はぐらかすな、四季」
「そんなに言わせたいの?」
俺さぁ、最近気づいたんだけど、どちらかと言うと自分は「愛す」より「愛されたい」方みたいなんだよね。で、そこで「して」なんて言ったら、なんか俺の方がずっと兄ちゃんの事好きみたいじゃん? いや、実際好きだけど、そうじゃないんだよ。
俺はもっと求められたいんだ、こっちからねだるんじゃなくて自発的に愛して欲しい、だから俺はここまで何も言わなかった。本当はもっと早くに兄ちゃんは音を上げると思ってたのに、意外と我慢強くてここまで何も言ってくれなかったものだから、つい俺も意地になったんだよな。
「それは勿論聞きたいが、俺はお前の嫌がる事はしない」
「それでも俺だって考えたんだよ、兄ちゃんはαで優秀な人だ、そんでもってそんなαと番うのはΩの役割。ちなみに俺はβだし、もし万が一兄ちゃんに運命の相手が現れたら一方的に捨てられるのは俺の方だと思わない?」
「俺はそんな事は絶対にしない!」
「本当にそうかな? 今はそう思ってたって将来的にはどうなるかなんて分からないだろ? 俺は子供が産めるΩじゃないんだし、兄弟だから結婚も出来ない。兄ちゃんを縛る術が俺には何もないんだよ? だから俺はもっともっと愛されたい、そんな受け身の愛じゃ満足できない!」
「四季……?」
訝し気な表情の一縷兄ちゃん、俺はそんな兄を押し倒し、その上に乗り上げて自身の服を捲り上げる。
「触りたいのに我慢してた? もうすっかり青痣も消えて綺麗になったんだよ」
肌の上に指を這わせてその視線を攫う、兄がごくりと生唾を飲み込むのが見て取れた。
「最初は性急だった癖に、そこからはずっと何もしてこないから、もういらないのかと思ってた」
「そんな訳あるかっ!」
「うん、そうだね……そうみたい」
跨った腰の下に主張するモノが起き上がる。いつも膝の上に乗っかっててもちっとも反応しないから、やっぱりβの俺じゃ駄目なのかと思ってたよ。
でも、そんな事なかったな。
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