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第4話(愁side)

プルルルルル・・ 「はい。和泉です。どうされました?」 早朝に会長から電話がかかってきた。 「朝早くにすまんな。今日9時に椎名と一緒に俺の家に来てくれるか?紹介したい奴がいる。」 「?・・はい。かしこまりました。その時に本日の商談の資料をお持ちしてもよろしいですか?」 「ああ。かまわない。じゃあよろしく頼む。」 「かしこまりました。」 電話を切ると、すぐに隣の部屋で眠っているであろう奴を起こしに行く。 「おい。凛月。起きろ。」 ベッドで爆睡している凛月の体をゆする。 俺たち幹部は、何か非常事態が起こった時に、どちらかに連絡が取れれば自動的に2人に情報が伝わるよう、一緒に住んでいる。 ・・・こいつ起きねえな。 「おい、起きろ。」 そういって、近くにあったクッションを投げつけてやった。 「!?いった。何?愁。早起きだね。」 まだ寝ぼけ眼な凛月が起きてくる。 「会長から電話があった。」 「会長?なんて?」 「紹介したいやつがいるから今日9時に自宅に来い。と」 「紹介?女?」 だんだん目が覚めてきたのか凛月が怪訝な顔をする。 そりゃそうだ。会長は性欲処理のために女性と寝ることはたまにあったが、俺たちに紹介することなど一回もなかったのだ。 「それがわからないんだ。」 「あ、そういえば。」 突然凛月が何かを思い出したように口を開いた。 「なんだ。」 「昨日会長が、レストランで気に入って自宅に連れ帰った人がいたって間宮(まみや)が言ってた気がする。」 間宮というのは天羽会の幹部補佐で、凛月の下についている。 「紹介したい人というのはそいつか。」 「でも、」 凛月が言葉を詰まらせる。 「なんだ?」 「・・・男だったって。」 「・・・・・・・・・・・・はぁ?」 二人の間に微妙な空気が流れる。 「ま、まあね、会ってみないとわからないからね」 「ああ。そうだな。」 無理やり話を終結させると、二人でコーヒーを飲みに行った。 会長の家に到着し、商談について話していると会長の寝室から物音がした。 「ん、起きたかな」 そういうと会長が寝室のドアに向かい、ドアを開けた。 そこから出てきた人と会長が話しているのを見て俺たちは顔を見合わせた。 「・・会長。そちらの方ですか?」 そう聞くと、会長ははそうだという。それに、日用品を買いに行くからと言う。日程を聞かれた凛月は表情には出さないものの、手帳を取り出す手がもたついていて、相当動揺していることが分かった。 買い物の予定が立ち、俺たちの自己紹介がすむと、会長が商談に出る時間になっていたため、 伶さんの相手は凛月にまかせ、俺は会長と共に車に乗り、商談に向かっていた。 「会長。伶さんのことをどう思っていらっしゃるんですか?」 「・・俺がいないと生きていけないようにしたいぐらいには好きだな。」 「ふっ。でしょうね。あなたが真剣なのは見てれば分かります。何年あなたに仕えていると思っていらっしゃるんですか。」 「俺は今まで、この仕事をして死ぬなら本望と思って生きてきた。だがな、あいつを見てからあいつのために生きて帰ってきたいと思うようになったんだ。だから、俺は誰に何と言われようとあいつ一人を好きでいるよ。」 「惚気は結構です。それに、私たちがいる以上、あなたを死なせるつもりはありません。 あなたをあなたの選んだ人のもとへ帰すのも私たちの仕事です」 「くくっそうか。ありがとう。和泉。」 「いえ、仕事ですので。」 ツンとする和泉の横で、会長が和泉にも幸せになる相手を早く見つけることを願っているのはまた別のお話。

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