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第7話

目が覚めると、辺りは真っ暗だった。 えーっと、僕はどうしたんだっけ。 さっきから頭が痛い。 痛む頭でバイトが終わってからのことを考える。 店を出て間宮さんのところに行こうとしたら後ろから口を押えられて・・・ そこまで思い出したところでハッとする。 僕、攫われちゃったんだ。早く龍也さんのところに帰らなきゃ。 そう思い、身じろぎをした時だった。 ガチャ ん?ガチャ?そういえば腕が思うように動かない。 まさかと思い自分の腕を見ると、案の定手錠がはめられていた。 どうしよう。外さなきゃ。でもどうやって? まさかの事態に僕の頭の中はパニック状態だった。とりあえず手錠を外そうとしている時だった。 「ああ、伶君起きたんだね。おはよう。」 後ろから声が聞こえた。サァッと血の気が引いていくのが分かった。ゆっくり後ろを振り向くと知らない男が立っていた。 「・・・だ、誰なんですか。あなた。」 「え?やだなぁ。誰だなんて。お店であんなに会ってるじゃないか。」 「・・・・お店?」 そういわれて今までにないぐらい頭をフル回転させて記憶をたどる。 「・・・・!あ、あなた、よくお店に来てくれた、」 「ああ、思い出してくれたんだね。びっくりしたよ。今までシフトの日は休まなかった伶君がこの前のシフトは来なかったから。風邪でも引いたのかと思って心配していたら親切な人が教えてくれたんだ。伶君が俺を差し置いて別に男を作ったってね。俺は失望したよ。でもね、そうじゃないって気が付いたんだ。伶君はその男に脅されて一緒にいるだけなんだってね。だから俺が伶君のことを助けてあげたんだ。そうだよね?伶君?」 そういうと男は僕の頬を撫でてきた。すごく気持ちが悪くてゾッと鳥肌が立った。 「っっ!!触るな!僕は脅されてなんかない!好きであの人と一緒にいるんだ! お願い。龍也さんのところに帰して。」 そういった瞬間、男のまとうオーラが変わった。 「好き?そんなわけないよね?伶君には俺がいるもんね?俺は伶君だけを見てきたんだよ。 だから伶君も俺のことしか見ちゃだめだもんね?そんなに俺以外の男の名前を言うなんて悪い子だね。喋れないようにしちゃおうか。」 つぎの瞬間男の手は僕の首を絞めてきた。 「俺の名前を呼ばない口はいらない!僕のことを見ない目はいらない!」 そういいながら僕の首を絞めてくる。 「んっん・・・カハッ・・・・く、くるしっ・・・・・や、だ・・やめ、、」 男が手を放すと一気に空気が入ってきてむせる。 「・・はッ・・・ゴホッゴホッ」 「苦しかった?伶君。ごめんね。でも、伶君がいけないんだよ。俺以外の男が好きだとかいうから。伶君は俺しか見ちゃいけないの。分かった?」 男が僕の顎をつかみ目線を合わせて聞いてくる。 首を絞められて呆然とする涙目の僕を見て男はふっと笑って部屋から出て行った。 ・・・・龍也さん。怖いよ。たすけて 僕の目から一筋の涙が伝って落ちた。

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