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第11話(龍也side)
和泉と椎名から伶の居場所が分かったという報告が入った。すぐにでも救出に向かいたいところだが、伶の安全を考え、明日偵察に行ってから救出に行くことになった。
伶は今頃どうしているのだろうか。襲われたりしていないだろうか。そんなことばかり考えながら自宅に戻る。玄関を開けてもお帰りなさいと迎えてくれる人はいない。前まではそれが当たり前だったはずなのに、どうも寂しく感じる。
ソファーに座り、伶のことを考えているとインターホンが鳴った。
「どうしたんだ?和泉、椎名。」
「いえ、会長がお好きなブランデーがありましたのでお届けに上がりました。」
「ああ。そうか。お前らも飲んでいくか?」
「そうさせていただきます。」
「お邪魔しまーす」
そう言うなり、和泉と椎名は部屋に上がる。
二人の後にリビングに入ると、二人は早速ブランデーの準備をしていた。
俺は気が利く部下を持ったものだ。今だって伶が攫われて沈んでいた俺を見て部屋を訪ねてきてくれる。二人にはほんとに感謝しかないな。
「どうぞ。」
「悪いな。」
和泉からグラスを受け取り、ソファーに腰掛けると二人も向かいに座る。
「心配ですか?伶さんのこと。」
「ああ。皮肉なもんだ。伶に会う前は一人でも平気だったはずなんだがな。」
「それだけ伶さんに本気だということなのでは?伶さんは必ず助け出します。」
「当たり前だ。失敗はするなよ。」
「もちろんです。」
二人なりに俺を心配してくれているんだろう。そう考えると少し気分が明るくなった。
それからは明日の予定を確認しながら、ブランデーを飲んだ。
「それでは、私たちはこれで失礼します。今日私たちは家には帰らずこの付近に宿泊していますので、何かありましたらお呼びください。」
「分かった。」
二人が去って行ったあと、俺一人が残った部屋で伶を救い出す決意を固めた。
「伶、無事でいてくれよ。」
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