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第12話(龍也side)
夜が明け、いくらなんでも早すぎるだろっていう時間に和泉に電話を掛ける。和泉は完璧にあきれている。・・・しょうがないだろ。心配なんだから。
和泉と椎名が俺の部屋に来てから車に乗り、伶がいるであろうマンションの偵察に行く。
ここに伶がいると思うと今すぐにでも助けに行きたいが、ぐっとその気持ちを抑える。
「会長。落ち着いてください。」
よほどソワソワしていたのか、椎名にあきれたように言われてしまった。
「落ち着いていられるか。」
そういって助手席に座っている椎名の椅子を蹴る。
「はい。大体分かったので一旦事務所に戻ります。」
「分かったなら今から行けばいいだろう。」
「何言ってるんですか。犯人に悟られたらまずいからと言って三人だけで来たでしょう。」
「三人で行けばいい。余裕だろ。」
「ふざけたこと言ってないで帰りますよ。」
和泉にズバッと切り捨てられ、俺は名残惜しく思いながら一旦そのマンションを後にした。
「・・・・・・・よし。この作戦で行くぞ。お前らくれぐれもへたなことはしないように。」
和泉が組員たちに向けていうと、ぴったりと揃った返事が返ってきた。
「お前ら。ありがとうな。」
ふとそういうと和泉と椎名をはじめとした組員が珍しいものでも見るような目で見てくる。
「なんだよ。」
「い、いえ。なんでもありません。ほら、お前ら準備しろ。」
椎名に言われて組員たちはワラワラと準備を始める。
・・・なんなんだよ。
「時間だ。行くぞ。」
マンションにつき、組員たちにゴーサインを出すと同時に俺も和泉と椎名と共に中に入る。
「会長。この部屋です。」
「分かった。」
椎名が部屋のカギを金属の棒のようなものであける。
部屋の外に見張りの組員を数名置き、物音をたてないように慎重に部屋に入る。
部屋の中を探索している時だった。奥の部屋から伶の声がかすかに聞こえた気がした。
『おい!あの部屋だ。』
周りにいる組員に小声で知らせると幹部の二人が行きましょうと目で合図してきた。
その合図にうなずいて返し、伶がいるであろう部屋の前まで行く。
部屋に近づくと伶の声も次第に聞こえるようになってきた。
『ヤッ。無理。やめっ』
伶だ。伶の声だ。明らかに襲われているであろう声に頭よりも体が先に動いた。
右足を大きく振り上げ、部屋のドアに蹴りを入れると、部屋のドアは簡単に開いた。
部屋の中に見えたのは、最愛の伶とその伶に馬乗りになる男だった。
伶の目には涙がたまっている。それを見た途端、自分の中で怒りが吹き上がってくるのを感じた。
「伶に指一本触れてみろ。・・殺すぞ。」
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