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第26話

仕事から帰ってきた龍也さんに来いと手招きされてダイニングテーブルの向かいに座ると、龍也さんが紙袋を持ってきてその中身をテーブルの上に広げた。 「何これ?」 龍也さんが広げたのは大量の旅行のパンフレットだった。 「天羽会で旅行に行くことになった。どこにいきたい?」 「それ僕も行っていいやつなの?」 組員さんたちと行ったほうがいいんじゃないかな。てか天羽会で行くのになんで行き先僕が決めるのさ。 「伶が行かなかったら誰が行くんだ」 「龍也さんと幹部の二人と組員さんたちでしょうよ」 「組員のやつらも伶と話したがっているだろう。本家にも認められた今、伶は形式上は天羽会の姐という立場になる。伶に姐としての仕事をやらせるつもりはさらさら無いが、姐という立場は組員たちと俺や幹部のあいつらよりも近い位置で接してやることができる立場だからな。 伶さえよければあいつ等と仲良くしてやってほしい。この旅行で組員たちと伶の距離が縮まったらいいと思っている」 龍也さんは顔には出づらいけど組員さんのことをよく考えてる。もちろん僕のことも。いろんな人のことを考えるから自然と自分のことが後回しになっちゃうんだろうな。その分僕が龍也さんのことをよく考えてあげないと。 「そういうことなら喜んで行くよ。僕も組員さんと仲良くなりたいと思ってたし」 「ホントか?それならどこに行きたいんだ」 「組員さんたちが行きたいところに行けばいいんじゃ」 「あいつらが俺たちにどこに行きたいと聞かれて答えると思うか?」 あー。そういうことか。前に顔見せに行った時も龍也さんたちに頭が上がらないって感じだったもんな。龍也さんたちに聞かれてもかしこまっちゃうんだろうな。 「じゃあ、組員さんたち疲れてるだろうから温泉とかどう?」 「温泉か...分かった、手配しておく。」 一通り話し終わってソファーでくつろいでいると龍也さんが隣に座ってきた。 「ん?どうしたnうわっ!」 急に龍也さんが僕のことを抱き寄せてきた。 「伶。」 「どうしたの?」 「あんな事言った後なんだが、...り、な....し....ほ、い」 「....え?ごめんよく聞こえなかった。もう一回言ってくれる?」 「だから、あんまり仲良くしてると....さみしくなるから」 「....ふふっなに?やきもち?」 「なっやきもちじゃない」 「大丈夫、僕には龍也さんだけだよ」 そう言って僕は龍也さんにチュッと口づけた。

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