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第27話
「伶ー。終わったか?」
旅行前の怒涛の繁忙期を何とか乗り切り、僕と龍也さんは明日から二泊三日の旅行に向けて荷物を整理していた。
和泉さんと椎名さんが組んだ自分達と龍也さんの旅行前のスケジュールは想像を絶する忙しさだった。龍也さんも昨日まで毎日遅くに死にそうな顔をして帰ってきていたし、たまに家に顔を出していた和泉さんも椎名さんもはっきり顔に出るわけじゃなかったけど疲れが顔ににじんでいた。この旅行でみんながゆっくりできるといいんだけど。
「あとは洗面用具..よしっ、龍也さん終わったー」
「ずいぶんかかったな」
旅行とか久しぶりすぎて準備に時間かかっちゃったな。僕の声を聞いた龍也さんが苦笑しながら自室から出てくる。
「龍也さんのは終わったの?」
「ああ。だいぶ前にな」
「そうなんだ」
「明日は七時半に和泉たちが迎えに来るからな。今日は早めに休もう」
時計を見ると夜の十時を回ったところだった。龍也さんと一緒にベッドに入り、龍也さんの腕の中で眠りについた。
ピピピピッピピピピ
アラームの音が鳴る。すぐ近くで龍也さんがモゾモゾと動き、アラームを止めようとする腕が空中をさまよう。アラームの音が止まると龍也さんの声がした。
「伶。起きろー」
「んー」
「んーじゃなくて、和泉たち来るぞ。」
「おきてるよ。」
「目が開いてないぞ」
「あいてる」
「ほら、準備するぞー」
そう言って龍也さんが僕をベッドから抱き上げて降ろす。
寝起きでぼーっとする頭を顔を洗ってシャキッとさせ、パジャマから着替える。
着替え終わって龍也さんとゆっくりしていると玄関のチャイムが鳴った。
「はーい」
玄関を開けると珍しくスーツ姿じゃないラフな格好の和泉さんと椎名さんが立っていた。
「スーツじゃない二人ってなんか新鮮ですね」
「俺がいいと言ったからな。旅行にまでスーツで来られたら堅苦しくてたまらん」
「お二人とも準備してください。お時間ですよ」
和泉さんたちに急かされてマンションの下に降りると、組員さんたちがたくさん集まっていた。みんな僕たちの姿を見つけるとそれぞれおはようございますと挨拶してくる。
一つ一つに挨拶を返しながら、龍也さんと先に車に乗り込む。
天羽会の車が列になって出発して、僕らの二泊三日の温泉旅行の幕が上がった。
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