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第28話

「会長、伶さん、次のサービスエリアで少し休憩を取ります。この後は目的地まで止まらない予定ですので、お手洗いなどはここで済ませてしまうようよろしくお願いします」 「はーい」 助手席から顔を出した和泉さんの言葉に返事をした。 車がサービスエリアに停車し、車から降りる。 「伶、トイレ行っておくか?」 「んー僕は行かなくても大丈夫かも。龍也さんは?」 「俺は行ってくるから、先に店見ててくれるか?」 龍也さんが僕に自分の財布を差し出しながら僕に言う。 「分かったー。僕も財布持ってるから大丈夫だよ」 「じゃあ何か買うのは待っててくれ。急いで行ってくるから」 「分かった、財布受け取るからゆっくり行ってきなよ」 このままだとトイレまで走っていきそうな龍也さんの勢いに押されて、財布を受け取る。 「はい。じゃあ行ってらっしゃい」 「ああ。知らない人についていったらダメだぞ」 「分かってるって」 もう!何歳だと思ってるんだよ。 龍也さんと別れて僕はお店の中に入る。 お店の中を見ながらうろうろしていると見覚えのある人がいた。 「あ、間宮さん!」 「え、あ、伶さん。」 「ご無沙汰してます!お元気でしたか?」 「はい、おかげさまで元気です」 「それならよかったです!」 間宮さんとはこの前の事件以来あってなかったから久しぶりだ。 「あ、あの!」 間宮さんと一緒にいた組員さん二人が声をかけてきた。 「伶さん、ですよね」 「はい!如月伶と言います。よろしくお願いしますね」 「よろしくお願いします!!!」 あらら、二人そろってガバッと頭を下げてしまった。 「やめてくださいよ!頭上げてください」 頭を下げている二人に言う。 「この旅行は僕と組員さんたちが仲良くなる目的もあるんですからね。いつでも声かけてください、待ってますね!」 「「はい!」」 「何か買うんですか?」 「はい、小腹がすいたので何かつまむものを買おうかと思いまして」 「あー確かに小腹すく時間ですね。僕も何か買おうかな」 「何か買うのか?伶」 後ろから声をかけられたと思ったら、体にズシッと何かが乗った。 「龍也さん。重い...」 「「「お疲れ様です!!」」」 龍也さんに向かって三人が一斉に頭を下げる。間宮さん以外の二人は完璧に動揺してるし。 「ああ。何か欲しいものがあるのか?伶」 龍也さんが三人に軽く返事をしてまた僕に聞いてくる。 「うん。小腹がすいたから何かつまむもの買おうかなって話してたの」 「そうなのか。何でも好きなものを買うといい」 「龍也さんも何か食べる?」 「伶が食べたいものを食べたい」 「なにそれー」 いつもよりボディータッチが多い龍也さんを軽く構いながら、間宮さんたちに向き直る。 「何買うんですか?僕お菓子見てこようかな。じゃあまた温泉で。龍也さん行くよー」 「ああ。お前らも楽しめよ」 「「「ありがとうございます!!」」」 龍也さんとその場を離れ、お菓子コーナーに行く。 「さっきちょっとヤキモチやいたでしょ」 「...やいてない」 「あーそう?勘違いだったんなら僕もう一回間宮さんたちのところ行こうかな」 「なんでだ。お菓子買うんだろう。」 少しムッとなってしまった龍也さんに引き留められる。 「やっぱりヤキモチ?」 「違う。早く選べ」 「はーい」 頑なに認めない龍也さんが面白い。 これ以上やるとほんとに拗ねちゃうから急ぎ目でお菓子を選び、車に戻る。 車に戻る途中も組員さんたちを龍也さんが教えてくれた。 「龍也さんって組員さん全員覚えてるの?」 「当たり前だろう。俺のために動いてくれているんだから名前ぐらい覚えてないと失礼だろ」 「そうだね、僕も早く覚えられるように頑張る」 「お前はゆっくりでいい」 「なんでよ」 「なんでもだ」 龍也さんと車に乗ってからもお話ししていると和泉さんも乗ってきた。 「そろそろ出発します。何かございますか?」 「僕は大丈夫です。龍也さんは?」 「俺も大丈夫だ」 「かしこまりました」 車が出発してから買ったお菓子を食べ始める。 「龍也さんも食べる?」 「あ。」 口を開けた龍也さんの口にラムネを入れてあげて、前に乗っている和泉さんと運転手さんにも声をかける。 「和泉さんたちにもあげます」 「あ、ありがとうございます。」 「運転手さんにもあげてください」 「わかりました」 お菓子を食べたりみんなでお話をしたりしていたら一時間なんてあっという間に過ぎてしまって、目的地に着いた。 「着いたーーーーー!!!」 車から降りるとそこには立派な旅館が立っていた。 「今日から二日間この旅館は貸し切ってある。各自好きにしているといい。夕食は2時間後の八時から大広間で食べるからそれまでには大広間に来ること。以上。」 椎名さんからの説明が終わり、各々割り当てられた部屋に散っていく。 「俺たちも行くぞ。伶」 「はーい!」

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