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第30話
今僕の前に広げられているのは今まで食べたことがないような豪華なご飯だった。
「すごいね!龍也さん!」
「食べたいものがあれば俺のから遠慮なくとれよ」
「うん、ありがと!」
そうは言ったものの、自分の分を食べたらお腹いっぱいになってしまうような量だった。
僕と龍也さんが大広間の上座に座り、僕らを中心に組員さんたちが円を描くように座っていた。
「会長一言お願いいたします」
全員が席に着いたのを確認して和泉さんが龍也さんに耳打ちする。龍也さんが分かったと返事をすると僕に視線を移し、伶さんもですよと言った。
「え?僕も?」
「難しいことは言わなくていい。簡単に一言いえばいいんだ」
「そんなこと言っても、簡単なことって何」
「伶が思っていることを言えばいい」
そんな難易度高いこと言われても、どうしたらいいんだ。
「今日は長旅で疲れがたまっている者もいるだろう。しっかり食べてよく寝て明日に備えてくれ」
「「はい!」」
龍也さんに言おうと思ってたこと全部取られたーーー!
それを見越していたのかニヤッと僕に笑いかけて頑張れと口パクしてくる。ああ。やばいどうしよう。
「伶さんお願いします」
和泉さんに声をかけられて立ち上がる。
「えーと、皆さん今日は車での移動お疲れさまでした。皆さんとこうやって旅行にこれたことをとっても嬉しく思っています。この旅行中に沢山皆さんとお話ししたいと思うので、どんどん話しかけてくださいね!でもまずは、このおいしそうなご飯食べましょう!いただきます!」
「「いただきます!!」」
僕に続いて組員さんたちが挨拶をして食べ始めたのを確認して僕も食べ始める。
「龍也さんこれ美味しいよ!」
「そうか。俺のも食べるか?」
「いいの?ありがとう!」
一通り食べ終わり、何しようかと周りを見回す。龍也さんは組員さんたちとお酒飲んでるし、僕もお話ししに行こうかな。
席を立って近くにいた組員さんに話しかける。
「こんばんは。おいしかったですね」
「れ、伶さん!?は、はい!美味しかったっす!」
「食べ物の中で一番何が好きなんですか?」
「お、俺は、えーと、えーと、な、何でも食べるっス!」
「あははっそうなんですね。好き嫌いがないのはいいことですよね!」
組員さんと話していたらほかの組員さんもわらわらと集まってきて夕食の時間中ずっと話していた。
夕食が終わると組員さんと別れ、龍也さんと自室に向かう。
部屋の扉を開けるともう二人分の布団が敷いてあり、それにダイブする。
「あー生き返るーー」
「オッサンか」
後ろから笑っている龍也さんの声が聞こえる。
「眠いよー」
「まだ寝るな。もうちょっと我慢しろ」
「えーやだー」
うつらうつらしていた意識がだんだんと薄れていって、僕は眠りに落ちた。
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