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第34話
龍也さんと旅館の周りをぶらぶらと散歩して帰ってくると大きな段ボールを抱えた椎名さんと鉢合わせた。
「おかえりなさいませ。会長、伶さん」
「ただいまです!」
「ああ。ただいま」
「それ、バーベキューのやつですか?」
「はい。そろそろ準備が終わりますので、終わったらお呼びしますね」
「それなら僕たちも手伝いますよ。いいよね、龍也さん」
「ああ。人数が多いほうが早く終わるだろう」
「そうゆうわけにはいきません。会長たちはお休みになっていてください」
椎名さんは大丈夫だと言い続けている。
「僕たちがいたら迷惑になりますか?」
「そんなことはございませんが」
「ならいいじゃないですか」
「...はぁ。あなたも相当頑固ですね。わかりました。参りましょう」
呆れたような椎名さんについて中庭に出ると、和泉さんやほかの組員さん達も準備をしていた。僕たちに気が付いた和泉さんがこちらによって来る。
「会長、伶さん申し訳ありませんがまだ準備が完了していませんのでも少々お待ちください」
「準備ができていないのは知ってる。手伝いに来た」
龍也さんが言うと和泉さんが一瞬目を見開いた。
「キツネにつままれたような顔をして、どうしたんだ」
「...いえ、それならあちらから網を持ってきていただけますか」
「ああ。分かった」
龍也さん達が火を起こしたりしている間に僕が飲み物の準備をしていると間宮さんが近くに来た。
「伶さん、こんにちは」
「あ!間宮さん!こんにちは」
「お手伝いします」
「ホントですか?ありがとうございます」
間宮さんと準備をしていると、和泉さんから呼ばれた。
「なんだろう、ちょっと行ってきますね」
間宮さんに一言言って和泉さんのところに行く。
「なんですか?」
「そろそろ焼きあがるのでお呼びいたしました」
「そうなんですね!僕、組員さんたちに焼きあがったの配ってきます」
「そんなことまでしなくて大丈夫ですよ」
「僕がしたいからするんです!組員さんの顔一人でも多く覚えたいので」
「そうですか?ならお願いします」
「はい!」
大きいお皿に焼きあがったお肉や野菜を乗せてもらって組員さんたちのところに配りに行く。
「お肉どうぞー。いっぱい食べてくださいね!」
組員さんたちに配っているとすぐにお皿は空になってしまった。
「和泉さーん。なくなっちゃいましたー」
「伶さんもお食べください」
そう言いながら和泉さんが僕のお皿にお肉を山盛りにしてくる。
「こんなに食べられないですよ」
「それでは会長に分けてあげてください」
和泉さんがチラッと目線を送った先には端のほうでお皿も持たずに組員さんたちを眺めている龍也さんがいた。
「じゃあ、そうしますね。ありがとうございます」
「いえ、なくなったらまたいらしてください」
「多分当分なくならないと思いますけど」
お皿にこんもり盛られたお肉を持って龍也さんのところに行く。
「龍也さん、一緒に食べよ」
「伶。またずいぶん盛ったな」
「これは、和泉さんが」
「ああ、そういうことか」
和泉さんが盛ったというと納得した様子の龍也さん。もしかして和泉さんって結構大食いなのかな。今度聞いてみよう。
「組員さん達楽しそうだね」
「ああ、俺は幸せ者だ。ここにいる奴ら全員が俺を信じてついてきてくれる。和泉や椎名はもちろんだがその他のやつらもみんな俺を慕ってくれる。それに、こんなに可愛い恋人もいるしな」
「ちょっと、何言ってんの。組員さん達いるんだから」
「聞かせておけばいいだろう」
「ダメだよ!それよりこれ食べて!僕一人じゃ食べきれないよ」
「ああ。これ二人でも食べきれるか怪しくないか?」
「残したらダメだって和泉さんが言ってた」
「それなら頑張って食べないとあいつうるさいからな」
龍也さんが言った瞬間に和泉さんがお皿を持ってこっちに来た。
「こちらもどうぞ。分かっているとは思いますが、すべて食べてくださいね」
ニコッと笑ったものの、目が全く笑っていない。
「龍也さんが余計なこと言うから増えちゃったじゃん!」
「耳良すぎないか」
「そんなことはいいから早く食べるよ!」
「ああ。」
和泉さんによって盛られた大量のお肉を何とか二人で食べきり、部屋に戻った。
「お腹いっぱいだよー」
「俺もだ。そうだ、花火やりたいか?」
「花火!!やりたい!!」
「分かった。今日の夜やるか」
「ほんと?楽しみ!」
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