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第48話(龍也side)
「あいつらはどこにいる?」
「如月樹の両親は小規模ながら会社を経営しています。毎日その事務所に遅くまで残っているようなので、今日もいるかと」
「そうか」
椎名の運転する車でその事務所とやらに向かう。
いつもだったら運転手を同行させるが今回は俺と幹部の二人だけを連れて行くことにした。
和泉は最初危ないから何人か組員を連れて行くの一点張りだったが、命令だというと渋々だったが了承した。
「会長、くれぐれも私共のそばを離れませんようお願いします」
「分かってる」
さっきから和泉は永遠に同じようなことを繰り返している。心配してくれるのはありがたいが、そろそろうるさい。
「和泉さっきから同じことしか言ってないよ?」
こそっと運転席から椎名が和泉に言うのがわかる。
「私だって言いたくて言っているわけではありません。そもそもたった三人で乗り込むというのは危険極まりない行為だということが分かっておいでなのですか」
クドクドと始まった和泉の説教を聞き流しながらお前が余計なことを言うからだぞと運転席を蹴る。
延々と続く和泉の説教をBGMに車は目的地へと進んでいった。
「着きました。ここです」
椎名が車を建物の陰に止めると車から降りる。
「このビルの二階ですね」
椎名がタブレット端末を操作しながら言う。
「行くぞ」
二人に声をかけて事務所に続く階段を上る。扉の前に着くと椎名と和泉がサッと前に出てきて俺に目配せをした。俺が頷くと二人がドアを開けた。
俺が一歩中に足を踏み入れると中にいた三人の顔がヒュッと青ざめたのが分かった。
「俺がここに来た理由は分かっているだろうな」
一歩一歩中に入り父親の前に立つ。
「なんだっていうんだ?俺たちはあいつの親戚だぞ。あいつをどうしようが勝手だろう」
精一杯の虚勢を張っている父親を見下す。
「はっ親戚だ?笑わせてくれるな。伶はもう俺のものだ。お前らに伶に触れる権利はない」
「俺たちは何も許可していないぞ?伶がお前のところに住むことも。お前のものになることもな」
「そうか。なら今ここで許可してもらおうじゃないか」
「はっ、するわけないだろ」
随分と調子に乗り始めている父親の首根っこを掴み上げる。
「この会社を捻りつぶすことは俺にとって赤子の手をひねることよりも簡単だ。ついでにお前らの家も車も全て奪い取ってやろうか?まぁ俺にとってはどれもガラクタにすぎないがな」
目を見開き固まっている父親をこれまた隅のほうで小さくなっている母親と樹のほうに放る。
そして自分は向かいのソファーに座り、三人と向き合う。俺の後ろには和泉と椎名も控えているのが気配で分かった。
「さて、どうするんだ?」
足を組み三人を見据えると父親が口を開いた。
「や、やめてくれ。この会社には俺たち家族の生活が懸かってるんだ」
「そんなの知ったことか。お前らの可愛い息子に体でも売らせたらどうだ?」
「そ、そんなこと!」
母親が金切り声をあげて否定してきた。
「何がいけないんだ?お前らが伶にしたのとほぼほぼ同じようなことだろう?店は紹介してやる」
視線を樹のほうに向けるとビクッとして母親の後ろに隠れてしまった。
「わ、悪かった。謝るから、家族だけは助けてくれ」
父親のほうが懇願してくる。
「今後一切伶に近づかないと約束しろ」
「分かった、近づかないから」
「そうか。ならいい。行くぞ」
後ろに控えていた二人を連れて事務所から出る。
「おい椎名、和泉」
「「はい」」
「潰せ」
「いいのですか?」
口元に意地悪い笑みをうかべながら椎名が聞いてくる。
「ああ。俺は何もしないだなんて一言も言っていない。俺の大事な伶に触れたらどうなるかを教えてやるんだ」
「「かしこまりました」」
俺たちはまた車に乗り込み、伶が待つ自宅へと戻っていった。
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