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第50話
「龍也さん!誕生日おめでとう!!」
ドアの前でこれは何事かと立ち止まっている龍也さんに声をかける。龍也さんは一瞬考える素振りを見せてから納得したような顔をした。
「今日だったか」
「やっぱり忘れてた!まぁいいや。乾杯するよ!こっち来て!」
龍也さんを部屋の中心に引っ張って行きコップを渡す。
「じゃあ皆さんコップ持ちましたか?」
辺りを見回して全員にコップが渡っていることを確認した。
「それじゃあ!龍也さんの誕生日を祝して!かんぱーい!!」
「「かんぱーい!」」
「料理いっぱいあるのでどんどん食べてくださいね!」
組員さん達がそれぞれ楽しみ始めたところで龍也さんが話しかけてきた。
「伶が準備したのか?」
「提案したのは僕だけど、準備したのは僕だけじゃないよ。椎名さんも和泉さんも手伝ってくれたし、ここの飾りつけとかは組員さんたちが手伝ってくれた」
「そうか。ありがとうな」
「どういたしいまして。組員さん達ともお話ししてきたら?僕とお話しするのは部屋に戻ってから2人でしよ」
「ん。わかった」
龍也さんを組員さんたちのところに送り出して自分はオレンジジュースをチビチビ飲む。
「よろしかったのですか?」
突然かけられた声にビックリして振り向くと椎名さんが立っていた。
「驚かせてしまいましたか?申し訳ありません」
「いえ、大丈夫ですよ」
「会長にプレゼントお渡しにならないのですか?」
「あとで渡しますよ。パーティーの間は組員さん達に龍也さんを貸出し中です」
「なぜです?」
「僕と龍也さんが仲良くできてればいいわけじゃないと思うんですよ」
「?それはどういった意味でしょう」
「僕と龍也さんが仲良くできるのももちろんですけど、組員さん達と龍也さんも距離を縮められたらいいなって思ったんですよ。組員さん達とお話をしても漠然とした憧れが龍也さんにあるって感じだったのでもっと龍也さんのことを知ってもらえたらいいな~って」
「伶さんは本当に..」
「...なんですか?」
「いえ、何でもありません。飲み物お注ぎしますよ。何がよろしいですか?」
「んーじゃあリンゴジュースお願いします」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
それからも夜が更けるまでみんなでパーティーを楽しんだ。
「もう随分と遅いですしそろそろお開きにしましょうか」
「そうですね」
「会長と伶さんはお送りしますよ」
「ありがとうございます」
和泉さんの送迎で僕と龍也さんは家に帰った。
「たのしかった?」
家について二人でソファーに座りながら龍也さんに問いかける。
「ああ。あんな風に祝ってもらったのは初めてかもしれないな」
「ほんとに!?」
「毎年椎名や和泉は何かしらくれたが俺自身もあまり誕生日に興味がなかったからな」
「あ、そうだ。龍也さん目閉じて」
「なんでだ」
「なんでも」
龍也さんに目を閉じていてもらって自分はプレゼントを取りに走る。
「はい、開けていいよ」
「なんだ?」
「プレゼント。お誕生日おめでとう」
渡してる最中に恥ずかしくなってきて押し付けるみたいにして龍也さんに持たせる。
「開けてもいいか?」
「うん」
龍也さんが開封している間、ソワソワしながら待つ。
「龍也さんに似合うかなと思ったんだけど」
「これは」
龍也さんの手の中にあるのは綺麗な紺色のネクタイだった。
「綺麗な色だ。伶が選んでくれたのか?」
「そうだよ」
「そうか」
龍也さんは自分が今しているネクタイを解いて、あげたネクタイを締め始めた。
「どうだ?似合っているか?」
結び終えて僕に向き直った龍也さんには真新しいネクタイが結ばれていて。
「すごく似合ってる。かっこいい」
「そうか」
嬉しそうに微笑んだ龍也さんを見て、僕もなんだかすごくうれしくなってきた。
「龍也さん。もう一回目閉じて?」
龍也さんが目を閉じたのを確認して唇に軽いキスをする。
「すっごいかっこいいよ。龍也さん」
目を開けた龍也さんに来いと手招きされて、龍也さんの膝に向かい合うように座らせられる。
「もう一回キスしてくれ」
「さっきしたじゃん」
「もう一回」
「恥ずかしいしやだ」
「伶」
「~~~っ」
耳元で吐息交じりに名前を呼ばれてしまったらしないという選択肢はないわけで。
「一回だけね」
「ん」
目を閉じている龍也さんにまた唇を合わせた。
「んぁ!?」
すぐに離れようとすると龍也さんの手が僕の首の裏をがっちりと抑え、舌が僕の唇を割り開き、口の中に入ってくる。龍也さんの舌が口の中を暴れまわって、唇が離れるころには僕は全身の力が抜けていた。
「腰砕けたか?」
龍也さんに体を預けるようになっていた僕の背中をポンポンと叩きながら笑っている龍也さんをムッとして見上げる。
「はぁ。またお前は俺をそうやって煽る」
ボソッとつぶやいた龍也さんは僕を抱き上げて寝室のドアを開けた。
....それからどうなったかはご想像にお任せするよ。
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