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第54話

カーテンの隙間から漏れる光がまぶしくて目を開ける。昨日は泣いてそのまま寝てしまったらしい。のそのそと体を起こすと龍也さんはもうベッドにはいなかった。リビングに行くと、ダイニングテーブルの上のメモには龍也さんのきれいな字で『おはよう。仕事に行ってくる。できるだけ早く帰るからいい子で待っていてくれ』と書いてあった。 龍也さんは僕に会わずに仕事に行くときはいつもこんな風にメモを残しておいてくれる。細かいところまで僕が寂しくないように気を使ってくれる龍也さんに昨日のことも何か僕の勘違いだと思えるようになった。 お昼どきになると、和泉さんが僕のお昼ご飯を持ってきてくれた。 「こんにちは。昼食をお持ちしました」 「あ、和泉さん。ありがとうございます」 和泉さんがテーブルの上に僕のお昼を広げるのを手伝う。 「なんか、今日のお昼多くないですか?」 「...会長がお選びになりましたので、お残しにならないよう」 「え!?」 明らかに一人分の量ではないお昼を僕はひーひー言いながら食べることになった。 「......お、おなかいっぱいです」 「でしょうね、私でも食べきるのがきつい量です」 「あ、和泉さん当たり前みたいにここにいますけど、お仕事大丈夫なんですか?」 「ええ、会長から伶さんの相手をという指示ですので」 「...そうなんですね。なら、どこかに出かけませんか?」 「何かしたいことでも?」 「いや、そういうわけじゃないんですけど」 「散歩。ということですか」 「まあ、そんな感じです。..!!あ、でも和泉さんが忙しいんだったら行かなくても大丈夫です」 「いえ、行きましょう。私の仕事は椎名の机に置いてきたので」 「......それって椎名さんに許可は...」 「さあ、どうでしょう」 ニヤッと悪い笑みを浮かべた和泉さんに絶対取ってないじゃん!!と心の中でツッコミを入れる。 「そうと決まれば、早く食べてしまってください」 テーブルの向かいに座った和泉さんに言われてあと半分ほどのお昼ご飯に目を落とす。 「...食べるの、手伝ってくれませんか」 「それは無理な相談ですね。その昼食は会長が、玲さんのためにえらんだ昼食です。それを私が食べたなんて知られたら私がお叱りを受けてしまいます」 「会長が」のところを異様に強調して言われた和泉さんの言葉に少しムッとしながらまた昼食を食べ始める。 「やっと食べ終わったーっ」 やっとのことでお昼を食べ終わると、和泉さんがニコッと笑って「お疲れ様です」といった。この人僕がひーひー食べてる間も心底楽しそうに僕のこと見てたし、実は結構ドSだったりするのかもしれない。 すこし食休みをした後、僕と和泉さんは散歩に出かけた。

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