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第55話
「さて、伶さん。外に出たはいいですがどこに行きましょうか」
「そうですね、、あ、僕のボールペンのインクが切れてしまって、買いに行ってもいいですか?」
「もちろんです。文房具屋ですと、商店街のほうに行ってみますか」
「はーい」
「和泉さんは龍也さんといつから一緒にいるんですか?」
目的のお店に向かって歩きながらずっと気になっていたことを聞いてみる。
「そうですね、私と会長が出会ったのは大体6年前ぐらいでしょうか」
どこか懐かしそうな眼をしながら和泉さんが答える。
「6年も前からいるんですね」
「機会があれば私と会長のなれそめでもお話しして差し上げますよ」
「今じゃないんですか?」
妙に含みのある言い方の和泉さんに聞き返すと、和泉さんは微笑んで言った。
「歩きながらするような話ではないですから」
「?」
なんとなくはぐらかされてしまったのでそれ以上聞かないようにする。
「何色のペンが必要なのですか?」
「んー黒と赤ですかね」
文房具屋に着き、ペンを選ぶ。
「メーカーなどの指定はございますか?」
「いや、とくにはないです」
「そうですか。なら、このメーカーが書きやすくてインクの持ちも長いですよ」
「え?」
「なにか?」
「あ、いや、和泉さんもこういうの使うんだなって、ちょっと、」
「意外ですか?」
「まあ、はい」
「商談などではちゃんとそれなりにいいものを使いますがね、普段使いするのはいつもこのメーカーのボールペンですよ」
「へぇ、そういうものなんですね」
和泉さんがおすすめしていたペンを持ってレジに向かう。会計を済ませて和泉さんのもとに戻った。
「ほかに何かいるものはありますか?」
「じゃあ帰り際にスーパーに寄ってもいいですか?最近全然龍也さんにご飯作ってあげられてなくて、今日こそは作ってあげたいので」
「かしこまりました」
「なにつくろうかなー」
スーパーについて野菜のコーナーを物色しながら夕飯のメニューを考える。
「あ、ジャガイモ安い。肉じゃがにしようかな。龍也さん肉じゃが嫌いじゃないですよね?」
「ええ、むしろ好きだと思いますよ」
「じゃあ今日の夕飯は肉じゃがに決定です」
「それでは材料を見に行きましょうか」
とりあえず必要なものをそろえてスーパーを出たころには日が落ち始めてしまっていた。
「早く帰って作り始めないとですね」
「そうですね、この時間ですと会長は仕事が順調に進めばあと2時間ほどでお帰りになると思いますよ」
「2時間あれば完成させられますね。よし、帰りましょう」
スーパーから家に帰っている時だった。
「伶さん、すいません。電話に出てきてもいいでしょうか」
「もちろんです」
「申し訳ありません。このあたりで待っていてください」
「はーい」
振動する携帯を片手に和泉さんは僕から少し距離を取り、電話に出た。
和泉さんが電話をしている間、何気なくあたりを見回す。
「......え、?龍也さん?」
道の反対側に見えたのは仕事中の龍也さんと......きれいな女の人
「すいません、お待たせしました。?伶さん?」
「へ!?あ、和泉さん。大丈夫でしたか?」
「ええ。あちらの会長の隣にいらっしゃる方は最近力をつけてきている会社の女社長ですね」
「え?いや、僕は別に、、」
「その顔を何とかしてから嘘はつくべきです」
「そんなこと、」
「気になるなら会長がお戻りになりましたら聞いてみたらいかがですか。私が会長とあの方は何もありませんと申し上げても信憑性に欠けるでしょう」
「いえ、すいません。帰りましょうか。肉じゃが作らなきゃ」
「...ええ。それでは行きましょう」
家路についても僕のモヤモヤした気持ちはなくならなかった。
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