「龍也！！！あんたなんで連絡よこさないのよ！！あんたの恋人私にも会わせてって言ってるのに！！」 携帯から聞こえてきた怒鳴り声に僕は驚いて声も出なかった。 「悪かった、悪かったから、そんなに怒鳴らないでくれ......姐さん」 ........？？？姐さん？え、今龍也さん姐さんって言った？ 「だいたいあんたはいつもいつも文也さんの連絡はすぐ返す癖に私のはいつまでたっても返しやしないんだから」 龍也さんに話す隙を与えずに姐さんと呼ばれた人の怒涛のお説教が始まった。隣で頭を抱えている龍也さんにどういう状況なのか目線で問いかける。 「ちょっと！？聞いてるの？龍也！」 「聞いてる、聞いてますよ。ついでに伶も聞いてる」 「あらやだ！先に言いなさいよ龍也！恥ずかしいじゃないの！」 「話させてくれなかったのは姐さんのほうだろ」 ぼそっと言った龍也さんの声は聞こえていたのかいないのか。 「伶、こちらが天竜組の姐さん、親父の嫁の紗友里さんだ。ずっと伶に会わせろって言ってたんだ。少し話してくれるか？」 「え、あ、あの、こんばんは。あの如月伶といいます。よろしくお願いします」 「あら～かわいい声ね～私は天竜組の七瀬紗友里よ。よろしくね。で？龍也？私はいつ伶君に会えるのかしら？」 「今話してるじゃないですか」 「文也さんは直接会って話してるのにずるいじゃないの」 「そんなこと言ってもですね」 タジタジになっている龍也さんが珍しくて話している龍也さんを眺める。 「龍也、今週の日曜日何もないでしょう」 「あ～そうですね、確認してみないと」 「その必要はないわ。私が確認しておいたから。和泉に。じゃあ、私がそっちに行くわね」 「は？いえ、俺たちがそちらに行きます」 「いいえ、私が行くのよ」 「姐さんにご足労いただくわけにはいきませんから」 「ごちゃごちゃうるさいわね。私が行くったら行くのよ。それじゃあ決まりね。また日曜日に。お休み、いい夢を。伶君」 ブチっと切られた電話を前に僕たち二人は顔を見合わせた。 「なんか、ごめんなさい」 心底あきれたというような顔をしている龍也さんにとりあえず謝ってみる。 「伶が謝る必要はない。むしろすまない。いつもあんな感じなんだ」 龍也さんが僕に向き直ったと思ったら、また膝の上にさっきと同じように乗せられた。 「これで誤解は解けたか？伶？」 僕の頬を両手で挟み優しい笑顔を浮かべながら龍也さんが聞いてくる。 「解けました」 「それはよかった。で？伶。この手の傷は何だ？」 「あ、料理するときにちょっと切っちゃって」 「ちょっと、ねぇ」 龍也さんが僕の手をつかんでまじまじと見る。絆創膏に血がにじんでいる部分を龍也さんの指がなぞる。 「自分の体にこんなに傷をつけて...お前の体が誰のものなのか教え込んでやらないといけないみたいだな」 突然龍也さんがニヤッと笑って、僕を担ぎ上げる。 「まっ龍也さん！待って！」 寝室につながるドアが開いたと思ったら僕の体はベッドに降ろされた。 「しっかり体に教え込んでやるから覚悟しろよ？」 僕の上に馬乗りになった龍也さんが不敵な笑みを浮かべながら言った。