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第62話
「ただいま~」
マンションに着く少し前に龍也さんに連絡を入れておいたら、僕たちが着いたときにマンションの前で出迎えてくれた。
「お帰り、伶。楽しかったか?」
「うん!すっごく楽しかったよ!これお土産のケーキ!みんなで食べられるようにいっぱい買ってきた!」
「そうか、ありがとうな」
龍也さんと話していると、紗友里さんが僕たちのところに近づいてきた。
「私は今日はこれでお暇するわ。今日はありがとう。とても楽しかったわ。伶君、今度は本家のほうにも遊びにいらっしゃい。文也さんも私も大歓迎よ」
「はい、ありがとうございます!」
「それじゃあまたね」
「あの!いろいろ教えてくれてありがとうございました」
車に乗り込む紗友里さんにむかって声をかける。
「私も伶君の話が聞けて良かったわ。龍也と喧嘩したら私に連絡してきなさい、私は伶君の味方よ」
パチッとウインクをして僕に紗友里さんが言うと、後ろから龍也さんの腕が伸びてきた。
「あいにく、俺たちは喧嘩をしないので、その必要はないかと」
「あら、そう?」
龍也さんに後ろからハグをされながら、龍也さんと紗友里さんの会話を見守る。
「まぁいいわ、伶君、じゃあまたね」
「はい、さようなら」
車の窓を開けて僕に手を振ってきた紗友里さんにお辞儀をする。
紗友里さんの車が走り去るところを見送って僕たちも家に入る。
「ケーキね、四個買ってきたの」
「それなら和泉たちも呼ぶか。その辺にいるだろう」
龍也さんがそういってあたりを見回すとちょうどこちらに歩いてくる幹部の二人が見えた。
「お疲れ様です。会長、伶さん」
「お疲れ様です!お二人ともこれから時間ありますか?」
「ええ、特に予定はありませんが」
「一緒にケーキ食べませんか?四つあるんです」
「会長がよろしいのでしたら、ご一緒させていただきます」
「構わん、じゃあ行くぞ」
龍也さんが僕の肩を抱いて歩き始めると、幹部の二人も後ろをついてきているのが分かった。
「私たちはこれで失礼します」
四人でケーキを食べて一時間ぐらいお話をした後に幹部の二人が帰った。
「ケーキ食べたからあんまりお腹すかないね」
「そうだな、夕食は軽く何か食べるだけでいいか?」
「うん、そうしよ」
幹部の二人が帰って少しすると、夕飯の時間になったが、おなかが空かないので軽くパンを食べて終わりにする。
僕がソファーの下の龍也さんの足の間に座って携帯でゲームをしていると、龍也さんが僕の髪の毛を触り始める。
「龍也さんって僕の髪の毛触るの好きだよね」
「ああ、伶の髪は柔らかくて触っていると心地いいからな」
「僕も龍也さんに髪の毛触られるの気持ちいから好き~」
「そうか」
「あ~~~負けちゃった」
ゲームに一区切りがついたところで携帯の電源を落とし、僕の頭をソファーに乗せるようにして龍也さんを見上げた。
「どうした?」
「お風呂入ってくる」
「急だな、分かった。行ってこい」
立ち上がり、お風呂の準備をしてお風呂に入った。
「龍也さん、お風呂出たよー」
「早かったな」
お風呂から上がると龍也さんはソファーに座り、お酒を飲んでいた。
「何飲んでるの?」
「ブランデーだ」
「おいしい?」
「俺は好きだぞ。飲んでみるか?」
「あ、僕、未成年なので、そういうのは良くないです」
「ふふっ、真面目だな」
またさっき座っていた龍也さんの足の間に座る。
「伶、髪濡れてるぞ。風邪ひくから乾かしてこい」
「え~めんどくさい」
「やってやるから、ドライヤーだけ持ってこい」
「やってくれるの?やった!持ってきまーす」
ドライヤーを持ってきて龍也さんに渡すと、龍也さんが僕の髪を優しく乾かし始めた。
「ほら、終わったぞ」
「ん、ありがと」
「眠くなったか?」
「んーん」
「明らかに眠そうだが」
「龍也さんが寝るまで起きてるもん」
「わかった、俺も急いで風呂入ってくるから、そしたら一緒に寝よう。いい子に待ってられるか?」
「うん」
僕がうなずくと龍也さんはお風呂のほうに向かっていった。
「待たせたな」
「んー抱っこ」
龍也さんのほうに腕を伸ばすとひょいと軽々と持ち上げられて、寝室のベッドの上に降ろされた。
「ほら、伶。おやすみ」
隣に寝転んだ龍也さんがトントンと僕の背中を心地いいリズムでたたくから、僕はすぐに眠りについた。
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