ふわふわと髪の毛を触られるような感じがする。 「ん、」 ゆっくりと目を開けると、ベッドサイドに腰かけている龍也さんが見えた。 「りゅうや、さん？」 「ん？ああ、起きたか。伶」 僕が起きたことに気づいた龍也さんがふと安心したような表情を浮かべる。 「のど、かわいたぁ」 「ほら」 龍也さんが水の入ったペットボトルを渡してくる。 「飲めるか？」 受け取ろうと伸ばした手がぽすっとベッドに落ちたのを見て、龍也さんが僕の背中に腕を回して体を起こす。 「背中もたれられるか？寝たままだと飲めないからな」 「ん」 ベッドヘッドに背中を預けて座っていると、龍也さんがペットボトルを片手に近づいてきた。 「ゆっくり飲めよ」 龍也さんが僕の口元にペットボトルを傾けて水を口の中に入れてくる。 「ん、も、いい」 一口飲んだところでペットボトルから顔をそむける。 「腹は減ってるか？」 「んーん」 「そうだろうな。でも薬飲む前に何か腹に入れておかないと効きが悪くなる」 「たべたくないー」 「一口だけでも何か食べないか？」 「たべさせてくれるなら、がんばる」 「お前は、ほんとに、そんなに煽るな」 頭を抱えた後、耐えるように椅子から立ち上がり、食べ物を頼んでくると龍也さんは寝室から出て行った。 寝室にひとりで龍也さんを待っているとなんか寂しくなってきて、ぶわっと涙が出てくる。 「ふぇ、りゅうやさ、まだぁ？」 ぐずぐず泣いていると寝室の扉が開き、龍也さんが入ってきた。 「どうした伶？どこか痛むか？」 僕が泣いているのを見ると、ベッドに駆け寄ってくる。 「りゅうやさ、いなくなったぁ」 「俺はここにいる。寂しかったか、悪かったな」 横になっている僕にぎゅっと覆いかぶさるようにハグをしてぽんぽんと安心させるように頭をなでてくる。 「一人にしないでぇ」 「わかった」 大好きな龍也さんの手に頭をなでられてだんだんに落ち着いてくる。スンスンと鼻をすすっていると玄関のチャイムが鳴った。 「飯が来たみたいなんだが、受け取りに行ってもいいか？」 龍也さんの問いにフルフルと首を横に振る。 「だめか」 困ったなと龍也さんが頭をかく。 「抱っこして」 「ん？ああ」 「違う、いっしょにごはん取りに行くの～」 ハグをしてきた龍也さんに駄々をこねるように言う。 「じゃあ…おぶってやるから寒くないようにブランケットかけておけ」 「ん」 「ちゃんと掴まっておけよ」 「うん」 龍也さんが僕をおぶって玄関まで行く。布団から出るとぞわっとした寒気を感じて、まだ熱があることを実感する。 「会長、お食事をもってきました…」 玄関を開けると和泉さんの声が聞こえた。ズキズキと痛む頭を龍也さんの肩に押し付けていたが、少しだけ頭を上げて和泉さんにお礼を言おうとする。 「ああ、和泉。悪いな。ご苦労だった」 「いづみさ、ありがと、ございま、す」 「いえ、お大事になさってください」 和泉さんが僕に微笑んで去っていく。 「りゅうやさん、寒い」 「だろうな、まだ熱がある」 「あたまいたい」 「ああ、辛いだろうな」 龍也さんが僕をベッドに降ろしながら龍也さんが僕の言葉に相槌をする。 「ほら、ちゃんと布団かけろ」 僕をベッドヘッドに座らせて、和泉さんが持ってきてくれた食事を龍也さんが準備している。 「うどんと粥どっちなら食べられそうだ？」 「うどん」 「わかった」 龍也さんが僕の口元に一口大にしたうどんを運んでくる。 「伶、口開けろ」 「あー」 口の中に入ってきたうどんをゆっくりと咀嚼する。 「もう一口食べれるか？」 「ん」 口を開けるともう一度口の中に入ってくる。またゆっくり咀嚼して飲み込む。 「もーいい」 「ちゃんと食べれたな。えらいぞ」 僕の頭を龍也さんの手がクシャっとなでる。 「次は薬飲もうな」 「それ、にがい？」 「苦いかもしれないな」 「やだ」 「飲まないと治らないぞ。デート行くんじゃないのか？」 「行くけどぉ」 「じゃあ頑張ろうな」 「んー」 しぶしぶ龍也さんから薬を受け取って口に入れる。すぐに水で流し込もうとするが、苦みが口に広がって眉間にしわが寄る。 「頑張れ」 意を決してごくんと飲み込む。 「よし、よくできたな。伶」 「ん」 「もう寝ろ」 「ねむくないもん」 「たくさん寝て、早く治してデート行くんだろ？隣にいてやるから横になって目を閉じろ」 「わかった」 横になると龍也さんが僕のお腹をぽんぽんと心地よいリズムでたたいてくる。目を閉じてしばらくすると、眠くないなんて言ったもののどんどん意識が眠りに落ちていった。