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第2話
家に弟の遺品である(おそらく)人形がきてから三日。
冬彦はその扱いにやや困っていた。
黒い瞳に見られているような気がして、どうにも落ち着かないのだ。
位置をずらしてもその視線は追ってくるようで、正直気味の悪さもあった。
インテリアになるだろうとはじめはリビングに置いていたが、三日目には玄関の棚まで移動させられていた。
いっそ目隠しに包帯でも巻いてしまおうかと思ったものの、そうすると長い睫毛が曲がってしまって、さすがに申し訳ない気持ちになる。
悩んだ末、冬彦はスマートフォンで検索画面を開く。
「ええっと……なんて入れればいいんだ?」
なんせ人形なんて、この約30年間無縁だ。
探るように、ゆっくりとフリック入力していく。
【人形 目 変更】
これでは求める答えは見つけられなかったが、ここから知ったことを数珠つなぎに調べていく。どうやらこの人形は、一般的にはドールと呼ばれる、広く愛好家を持ついわゆる愛玩趣味のようなものの一つらしい。
【ドール アイ 販売】
やがて、奇遇にも冬彦の住むマンションから車で20分ほどの距離に、アイと呼ばれる目のパーツを取り扱う工房があることを突き止めた。
通販であればいくらでも売っているが、なにせなにも分からないのだ。取り換え方も、サイズも。
次の休日。
冬彦は人形を連れ帰った日のように布に包むと、工房へと向かった。
あらかじめ電話でアポイントメントは取っている。対応がスムーズに済むことを願いながら、冬彦はハンドルをきった。
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