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第5話 じゃぶじゃぶ飲みなよ

「さ、飲んでくださいよ!また香住さんが来てくれるとは思わなかったなー!今回も安泰だ」 「あ、すいません」 歓迎会はいきなり盛り上がっていた。有志の歓迎会と聞いていたが、かなりの人数が参加している。 男ばかり15人ちょっといるだろうか。個室にギリギリいっぱいだ。 「しかし香住さんも大変ですね。若いのにこんな遠くまで越させられて」 「いえ、独り身なんで身軽なものです」 「でもこんだけいい男だったら彼女くらいいるでしょう」 「まあ、それは……」 縁の視線を意識する。 奏太から見て斜め向かいの入り口付近にいるのだが、他のみんなの話を聞きながら静かに飲んでいる。 奏太の両脇にいる男が曲者で、どうやら人に注ぐのが好きなタイプらしい。 ちょっとでも奏太のグラスが空けば注いでくる。 空かなくても、空けるよう促してくる。 「前回いらしたのはいつでしたっけ……2年前かな?」 「そうですね、それくらいだったかと」 「あの時は3人くらいでいらしたんですよね」 「ええ。榛名と山本が一緒でした」 「今じゃいい思い出ですけど、あの時も大変でしたねえ」 「そうでしたね」 「あの時のメンバーで今いるのは……俺と原田さんと中村さんと縁くんくらいかあ」 内心、縁くん?!と思ったが、顔には出さない。 「あの時は、香住さんが帰ったあとの方が大変でねえ」 「え?」 「香住さんがいなくなって、女の子達ががっかりしちゃってさ!あっはっは」 「はは……」 何と反応して良いか分からない。 何杯呑んだか分からなくなった頃、奏太はもよおしてきた。 「すみません、ちょっとお手洗いに……」 「ああ、はいはい。すみませんね、人いっぱいなもんで」 座った人たちの後ろを壁を掠めながら進むしかない。 部屋を出て、用を足して戻ってから、ようやくまずいことに気がついた。 もとの席に戻れない。 「あー!すみませんね、香住さん。そのままそっちに移動していただいた方が楽かなあ。はい、グラスと箸」 「はい」 縁が手を伸ばして受けとる。 まんまと縁の隣に座るはめになったわけだ。 仕方なく腰を下ろす。

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