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第6話 油断した奏太

縁は縁で絶妙なタイミングで酒を注いでくる。 グラスからちょっと目を離すともうグラスはいっぱいになっている。 「香住さん、確か結構お強いんですよね」 涼しい顔でしゃあしゃあと言ってくる。 前回はお前に寝かされたんだよと言いたいがぐっとこらえる。 こっちの入り口付近は比較的若い人で埋まっている。といっても、奏太と同じくらいかちょっと下くらいだろうか。 「いえいえ、遠山さんこそ飲んでくださいよ」 「あー!こいつね、縁って呼んでやってください」 縁の隣の男が、にこにこと言う。 「は」 奏太が思わず虚を突かれる。 「実は最近部長に同じ遠山さんが赴任したんですよ。そうなると、俺らも遠山くん遠山くんって呼べないじゃないですか。なんで、こいつは名前で呼ぶことになったんです」 「はあ……じゃあ、縁、さん」 「はい。よろしくです」 いかにも嬉しそうに微笑むのが怖い。 宴会は何とか潰れずに切り抜けた。 寮を利用しているのはどうやら奏太と縁だけだったようで、帰り道は自然と二人になった。 縁がプライベートに踏み込みそうになるたび、奏太は仕事の話を繋いで切り抜けた。 しかし、エレベーターで自然と無言になった瞬間、 「香住さん、明後日の土曜日空いてますよね?」 「ええ」 さすがに、来たばかりで予定があるとは言えない。 「良かったらテニス付き合っていただけませんか?」 「テニス、ですか」 「最近嵌まってまして。どうでしょう?」 「テニスは遊び程度しかやったことないんですが……それで構わないなら」 「よかった!同期のやつらは一通り誘っちゃって、のってくれないんですよ。ぜひお願いします!あ、せっかくなんで連絡先交換しませんか?」 完全に縁のペースにのまれた奏太は、言われるがままに連絡先を交換し、次の休みは縁に付き合うことになった。 「じゃ、また明日よろしくお願いしますね。おやすみなさい」 「おやすみなさい」 部屋に入って、奏太は思わず玄関先でへたりこんだ。

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