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第8話 お仕事お仕事♪……からの?
翌朝。
職場に行くと、まだあまり人は来ていなかった。
割り振られた席に近づくと、隣に縁が見えた。
「おはようございます」
「あ、……縁さん。おはようございます」
「香住さんお早いですね。うちの部、全体的に出社遅いんで、ゆっくりでも大丈夫ですよ」
「いや、私はこれくらいの方が。寮も近いんで楽ですし」
縁はそうですかと言ってにこりと笑うと再び仕事を始めた。
その日から本格的に作業を始めたが、縁は仕事のパートナーとしてはかなり理想的だった。
欲しい資料は頼む前に出来ているし、質問すれば必ず的確な答えが返ってくる。
奏太が何かアイディアを出せば、プラスαしてくれる。
今回の仕事は予定通りに終わるんじゃないかと思い始めたところで、昼休みになった。
「香住さん、良かったらお昼ご一緒にいかがですか。この辺の飯処ご案内しますよ」
「あー、助かります。お願いします」
近辺の定食屋やラーメン屋を一通り教えてもらい、一番おすすめだというラーメン屋に入った。
「縁さん、さすが仕事が速いですね。すごくやりやすいです」
「いえいえ、香住さんの立てた計画が的確だからですよ。こちらこそやりやすくて助かります」
そんな会話を交わしながらラーメンを啜る。
ふと、といった感じで縁が言う。
「そういえば、以前写真を見せてくださった彼女さんとはまだお付き合いを?」
「と、唐突ですね。ええ。そうです」
「ああ、そうですか」
そう言ったきり縁は黙ってしまった。
「なんで、そんなこと聞くんです?」
沈黙に耐えきれなくなった奏太が聞いた。
「その……もし間違ってたら失礼になるかもしれないんで聞きにくいんですけど。……あの方、弟さんですか?」
奏太は背中を冷や汗が流れていくのを感じた。
縁が続ける。
「いえね、ずいぶん可愛らしい方だったんで記憶に残ってたんですよ。それで、今回香住さんがいらっしゃる関係で本社に電話する機会がありまして。香住さんの同期で山根っているでしょう?大学の後輩なんで、ちょっと話をしたんですよ」
「はい」
ようやく奏太の喉から声が出た。
「そうしたら、たしか香住さんには、5つ下の女の子みたいに可愛らしい弟さんがいらっしゃると言ってましてね」
「ええ」
「写真の方、弟さんですよね?」
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