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第18話 送別会開始
ここで、縁が震えてきた。
「奏太さん、照り焼きめっちゃ良い匂いするんですけど」
「ああ?しょうがないな、端の一欠けなら食ってもいいぞ」
「あああありがとうございます!」
「代わりにハイボールお代わり頼む」
「いつの間に飲んでたんですか」
縁が立ってお代わりを作る。
じゃがいもの両面が焼き上がり、ガレットが完成した。
これも切って皿に盛る。
残りのじゃがいもと玉ねぎ、ベーコンをフライパンで炒める。
ほうれん草を適当に切りながら縁の方を覗くと、照り焼きの端切れをちびちび齧っていて微笑ましい。
「もう後四分の一くらいだから我慢してくれ」
「大丈夫です!」
玉ねぎが透き通ってきたところで塩コショウで味を整え、皿に盛る。
だいぶテーブルの上が埋まってきた。
最後に残しておいたベーコンとほうれん草、コーンを炒めて終了だ。
照り焼きが冷めてしまったので、レンジで温めながらハイボールを飲む。
「ハイボール作るの上手いな。ちょうどいい濃さだ」
「いやー、何かウイスキーのCMあったじゃないですか。あれの通りに作ってるだけです」
縁がCMソングを鼻歌で歌っている間に、照り焼きも温め終わって、全品完成だ。
「出来上がりだ。取り皿と箸あるか?」
「箸ないんで割り箸でもいいですか?」
「かまわない」
テーブルの上を整えて、準備完了した。
「鳥の照り焼き、じゃがいものガレット、ジャーマンポテト、ほうれん草の炒め物だ。……名前はどうでもいいな。始めようか」
「はい。では改めまして……奏太さん、お疲れさまでした!今後ともよろしくお願いします!」
「お疲れ。よろしく」
カランとグラスをぶつけて宴を始めた。
「すごいですね、あっという間にできちゃった」
「料理は趣味みたいなものだからな」
「普段も料理してるんですか?」
「定時に帰れた時だけだな。後は残り物とか買ってきて済ませたりとかしてる」
「それでもすごいです……。では早速いただきます!……うわ、うまっ、美味いです」
「それはよかった」
嬉しそうに食べる縁につられて、奏太も微笑む。
「やっぱり食事は一人より誰かと食べた方が美味いよな」
「そうですねー。一人だと気は楽ですけど、どうしても適当になっちゃいますし」
「二年前にこの寮に来たときは、休憩室みたいなところでみんな飯食べてたじゃないか。あれは廃止になったのか?」
「あー、電子レンジとか置いてあったとこですね。なくなっちゃったんですよー。上の判断で。自炊してるやつらは使わないですし。稼働率が低いって言われちゃって」
「あれはあれで楽しかったけどな。冷蔵庫に色々入ってて」
「余りものとかみんな勝手に入れてましたねー。懐かしいなあ。今はもう普通のマンションですから」
昔話に花を咲かせながら、酒も食も進んだ。
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