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第19話 ……

奏太にハイボールを作って戻ってきた縁が、軽く手のひらで顔を扇いだ。 「やー、暑くなってきません?」 「飲んでるからな」 「窓、開けますね。部屋が狭いもので、ちょっと前すみません」 奏太が座っている側を通ろうとした縁は、奏太の前を跨いで横切るふりで、そのままストンと座りこんだ。 「は?」 奏太からすると膝の上に乗られた形になり、身動きが取れない。 あっけにとられているうちに、しっかり右腕を掴まれて抵抗もできなくなる。 「おい」 縁は黙って右手で奏太の顎をとらえると、唇を奪った。 キスは数秒だっただろうか。 縁は少し唇を離すと、ぽつりと呟いた。 「2年前からずっと好きでした」 ぱしっ 奏太が空いていた左手で縁の頬を打った。 「貴様……なめるなよ……」 奏太はその手の甲で唇を拭うと、怒りの形相で縁を睨み付ける。 一瞬ぽかんとした縁だったが、次の瞬間我に返り、反対側の壁まで離れ、膝をついて頭を下げた。 「すみません!今回ずっとご一緒できて、舞い上がっちゃって!でも、飽き性の俺が2年間もずっと誰かを好きだったのなんて初めてなんです」 片膝を立てた奏太は、髪をかきあげると改めて縁を睨んだ。 「悪いがそれはどうでもいい。俺が気に入らないのは、力ずくで何とかなると思われたことだ」 「……!……すみません……」 「不意打ちなんてしないで、堂々と言えばいいものを……」 言葉を切った奏太は立ち上がり、部屋の出口に向かった。 「今日はもう帰る。お前も少し頭を冷やせ」

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