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第20話 ピンチ

月曜日。 いつも通り出勤し、奏太は自席に向かう。 いつも通り早めに来ている縁が、明らかに体を固くしたのが分かった。 「おはようございます」 「……おはよう、ございます」 返答もどことなく固い。 「残り二日半ですから、よろしくお願いしますね」 「は、はい」 縁はどうやらショックから立ち直れていないようだった。 普段はほとんどミスをしないのだが、ケアレスミスが目だって多い。 奏太はどうにも嫌な予感がした。 予感が的中したのは、火曜の午後だった。 大量のCCメールの中の、顧客宛の縁のメールを開いて、思わず目を見開いた。 資料の送付日の変更を知らせるメールだったのだが、来週の水曜のはずが、今週の水曜、つまり明日に納品することになっている。 資料自体はまだ草稿もできていない。 こういうときに限って顧客からは早々に了解の返事が来てしまっている。 「縁さん、これ」 縁もメール画面を見て、顔が青ざめている。 「すみません……!どうしましょう」 「明日、上の承認とって顧客に送るしかねーだろ」 「上長、明日全ての時間に打ち合わせ入っちゃってます」 「じゃあその前だ。説得してくる」 奏太はまっすぐ部長席へ向かった。 しばらくして戻ってきた奏太は、少し表情を緩めた。 「予定変更して、朝一で30分時間をもらった。スケジュールいれとけ」 「はい」 「できたらちょっと休憩しよう」 外の休憩所に出た奏太は、コーラを2本買い、1本を縁に渡した。 「奢りだ」 「ありがとう……ございます」 縁はまだ茫然自失の様相だ。いつもの活気がない。 奏太は少し考えて、ボトルの底で縁の肩を軽く突いた。 「土曜の件は忘れてくれ。俺も忘れる。お前に後に引きずらせるような対応をした俺が悪かった」 「奏太さん」 恐る恐る顔をあげた縁に、奏太は笑顔を向けた。 「資料一つ作るくらい、お前と俺ならできるだろ?ほら、気合い入れろって」 「はい」 「あと、敬語は一時停止だ。本気入れてやるぞ」

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