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第4話
「おい、起きろ」
最近あいつは俺が家に帰ると家のどこかで眠っていることが多い。
ご飯が作りかけの時もあれば高校の制服のままの時もある。
高校入ったばっかで疲れるのもわかるけど、俺だって疲れて帰ってきてんだからお出迎えくらいはしてほしい。
なのにすやすや寝やがって…
あいつの服をつかんで起き上がらせると頬を何度か叩いた。
いつもならこのくらいで起きて謝ってくるんだけど今日は起きない。
相当熟睡してるな、こっちだってイライラしてるって言うのに…
「おい、起きろつってんだろ!」
声をかけても頬を叩いてみても起きそうにない。
さすがに様子がおかしいと思い誰かに相談しようと思ったが、こういうことを相談できるような特別親しい友達もいないので病院に連れていくことにした。
自分の車に乗せるために抱きかかえると、思っていたよりも軽いその体に驚いた。
もう何回も抱いて裸は見ているからそりゃ細いとは思っていたし、肉もついてないのは知っていたけど…
急いで病院に連れて行くと救急で見てもらえてすぐに診察が始まった。
色々な検査をしたらしく、俺は待合室で何時間か待たされた。
検査結果が出たというので診察室に入ると、主治医の先生に開口一番に言われた。
「栄養失調とストレスですね」
栄養失調?
ストレス?
だってあいつはいつも自分で飯を作っていて、俺が食べ終わってから食べてたんじゃないのか?
「かなり前からほとんど食事をとれていなかったのでは?それに加えてここ最近過度なストレスを感じ、倒れたのかと思います。これまでも何度か気を失うことはあったのではないですか?」
もしかして、俺が寝ていると思っていたのは気を失っていたのか?
それに過度なストレスって、ここ最近は俺と毎日セックスしていたくらいじゃないか…?
それともほかに学校で何かあったとか…?
一気に衝撃的なことを言われて頭がこんがらがっている。
もしかして全部俺のせいなのか?
「これからしばらくは入院してもらうことになると思います。お兄さんも大変でしょうが準備をお願いします」
「あ、あぁ…はい」
ぞわぞわと嫌な感じが込み上げてくる。
まるで周りがみんな俺のことを責めているようで気持ちが悪くなった。
あいつは今日からすぐ入院だと言っていたから着替えを持っていかなくてはいけない。
車で家と病院とを往復し入院に必要なものを持ってくると、あっという間に面会時間が終わってしまい今日は家に帰ることにした。
家に帰ったところでやることもなければ飯を食べる気にもなれず、眠れるような精神状態でもなかった。
思い返してみれば自分がやってきたことに罪悪感しか感じない。
思春期だったから、気持ちを表に出すのが苦手な不器用だから、そんな言葉でごまかせるよう
な次元じゃなかった。
俺のしたことは、犯罪じゃないか…
一度考え始めるとネガティブなことしか考えられなくなる。
もしかしたらあの医者は俺のしたことを知ったうえであんなことを言ったんじゃないのか?
お前のせいだと嘲るために…
よし、あいつが退院したら今までのことをきちんと謝ろう。
そして本当の兄弟になれるように努力をしよう。
あいつへの気持ちはもう捨てて忘れるんだ。
この気持ちを収めるにはそれしかない。
そう心に決めてもうすっかり明るくなった外に出ようと思った時。
ガチャガチャ、と玄関のかぎを開ける音が聞こえた。
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