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第13話

階段を駆け下りながら考える。 ここはどこなのだろう? 学園の寮であることは分かるのだが、エレベーターホールにはシャンデリアがぶら下がっていたし、廊下には絨毯が敷かれていて、俺の知る寮の姿とは造りも仕様も何もかもが異なっていた。 エレベーターの表示から篠宮の部屋があったのは最上階の6階で、階数も俺が住む寮と同じなのだが、俺らの寮の6階はこんな姿をしていない。 考えながら4階まで辿り着いた時、開くエレベーターの音が聞こえて顔を覗かせた。 もしかしたら先程動いていたエレベーターが人を降ろすため止まったのかもしれない。であれば、人が降りた後のそれに乗り込んで…とにかく外に出るために1階まで下りよう。 「佐伯くん?」 しかし俺がエレベーターを確認するより先に降りてきた人物…同じクラスの藤本が俺を見つけて声をかけてきた。 「どうしたの?佐伯くんは安全のために篠宮くんの部屋で自習することになったって聞いてたけど…。」 本当にそんな話になっていたのかと呆れたが早くここから離れなければと思い、藤本に断りを入れ、エレベーターに乗り込もうとする。 「え!?ちょっと佐伯くんそんな格好でどこ行くつもり!?それに何それ…鎖…?」 「学校だよ。篠宮の好きにさせないでほしいって先生に頼みに行く。」 「待って待って。それにしたってもっと服装を考えなきゃ。とりあえず僕の部屋に行こう!」 そう手を引かれ藤本の部屋へと来た俺は言われるまま差し出された服を着て藤本に礼を言う。 連れてこられたその部屋は篠宮の部屋ほど大きくはないが、それでも俺の部屋よりはずっと豪華で広く、篠宮の部屋同様キッチンや別室の寝室が用意されていた。 「あの…ここって学校の…敷地内?俺たちの寮とは別の建物みたいだけど…。」 「ええ?本気で言ってる?」 少し驚いた後藤本はここは俺らの寮がある建物と食堂やランドリーを挟んで反対側に建つ特別生向けの寮なのだと説明してくれた。 要するに学校への寄付金が特に多い生徒が住める寮らしい。 食堂の反対側に別の寮があることは知っていたが、単純に寮の別棟で俺たちのと似たような造りだとばかり思っていたので驚いた…。 「篠宮くんの部屋は最上階でしょ?彼がここの理事長の親戚なのは有名だからね。」 「え?」 「え?これも知らないの?確か篠宮くんの家が本家で、理事長の家が…少し離れた分家じゃなかったかな?」 なるほど。篠宮がやたらと好き勝手出来ていたのはそういうことだったのか。 教師陣に助けを求めても大した事はしてもらえないだろうことが分かり奥歯を噛み締める。 そんな俺に藤本が突然提案をしてきた。 「ねぇ、もし佐伯くんがさっき言ってた通り本当に篠宮くんと付き合ってもなくて番じゃないって言うなら、事態が落ち着くまで僕の部屋に身を隠すのはどう?」 驚き、俺を匿うメリットがあるとは思えなくて理由を尋ねると単に人助けをしたいのと、あとは篠宮の気を少しでも俺から逸らして自分に振り向いて欲しいのだと照れくさそうに答えた。 藤本はΩで、現在特定の番を持っていないらしい。 「そろそろ本気出してアピールしなきゃって思ってたんだ。ちょうどいい機会だよ。」 そう言って藤本が笑ったので、俺はその言葉に甘えて暫くの間藤本の部屋で身を潜めることにした。

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